schedule ページ19
痛い視線を無視して受け取るとやつは嬉しそうに微笑んだ。
「少し早いけどクリスマスプレゼント！トクベツだよ」
このわざとらしすぎる地雷。
相当手早く切りたいお客さんなんだろう。
これはちょくちょくある。
私を使って行きすぎたファンを撲滅していく荒業。
私は暴徒化した彼女らに刺されないことを願う…
「んふふ、開けないのー？」
「うん…」
「開けてほしいなあ」
「なんで」
「Aの喜ぶ顔が見たいから？」
…凍った。
一瞬にして空気が凍った。
これはもう、この流れに乗るしかないよ。
一芝居打ちます。
「瑛治の特別なプレゼントだから開けるのもったいないな」
「Aかわい」
「瑛治もかっこいいね」
「じゃあ俺らお似合いだね」
「うれしい」
嘘くさい会話をだらだらと続け、お互いにハートを飛ばしあっていると
いつの間にか会計を済ませたオネエサンは退店していった。
最後らへんはなんだか気持ち悪くなってきちゃってかなり棒読みだったけど、そんなことにも気づかないくらい悲しかったんだろうね。
ごめんね、オネエサン。
「ほんと、開けてみてよ。俺も中身知りたいし」
「ん？」
「それ大ちゃんからの預りもん。Aが来たら渡してって頼まれてさ」
ゆっくりと、包装紙を破かないように開けてみる。
ん？オレンジ色の、ノート？手帳だ。
表紙を見るとなにやら人影のようなものが…だれ？
「これ、落ちてきたよ」
瑛治が拾った『楽しみにしててちょ！』というメモ。
中をぺらっとめくってみる。
1月と2月のランダムな日付に赤丸がしてある、ただそれだけ。
「あ、なるほど」
「どゆこと？」
「大ちゃんのオフの日に丸つけてあんじゃね？だから"楽しみにしててちょ"」
「ああ！そゆこと！」
「大ちゃんらしいね」
瑛治がいなかったら絶対意味分かってなかった。
きっとこの赤丸もいろんな都合で何日か潰れるとは思うけど、それでも大ちゃんの気持ちが嬉しかった。
.
.
会えないかもと言われつつ、今日は多忙な彼とゆっくりできる日。
部屋の掃除も終わったし…録り溜めたHDDの消化にかかる。
すると、この手帳の表紙が何者なのかを知ることが出来た。
ファンの子みんな欲しがるやつじゃん。
嬉しいけどおおっぴらに使えそうにない。
『もう会いたくて死にそう。なんつって』
彼からの返信はなんてくるのかな。
丸がついたカレンダーの日付を指でなぞった。
End
__________
いつかの昼番組手帳特集ネタ。
2016.12.22
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もぶ | 作成日時：2016年11月22日 21時
