令和から来た私だけど、まぁとりあえず鬼殺隊には入るよね

漆　優良物件 ページ9

「そういや名乗ってなかったな。 俺は文月(ﾌﾂﾞｷ)匠(ﾀｸﾐ)だ。」


「あ、私は真宮Aです。」


「嬢ちゃんはこの辺の人間か？」


「いえ、違います。 少し前にここに着いたばかりです。 ちょっと訳あって家を出たんです。」


「そうか。」




訳も何もないけどな！！炊飯器ぶっ壊れたからツルハにご飯買いに行っただけなんだけどな！！もっと言うならツルハの自動ドアを通っただけなんだけどな！！

ってかこの人めっちゃ食べるじゃん！！！

自分から聞いといて食べるのに夢中じゃん！！！話ちゃんと聞いてんのか！！？




「じゃあ宿は取ってあるのか？」


「あぁいえ、それはまだ……」


「俺ん家来るか？」


「は？」


「家には帰れねえんだろ？ とりあえずどっかに住まねえことには始まらないだろうし。 来るか？」


「いや、でも、ご迷惑になりますので…」


「俺は気にしない。 それにお前くらいの子が欲しかったからちょうどいい。」




やべぇ奴じゃんか。シンプルにやべぇ奴じゃん。

なに、ちょうどいいってなに。私ぐらいの子が欲しかったって？は？どういうこと？

怖いんだけど何。




「別に金はとらねえし、家事全般をやってくれりゃそれでいい。必要な金はやる。 どうだ？来るか？」




めっちゃいいじゃん何その物件。優良物件ってやつじゃん。

この人が悪い人じゃないのはわかる。

“黒”じゃないから敵意もない。それどころか、色は“黄”。

なんで黄色？よく分からんな。




「えー、と……じゃあお邪魔させていただきます。」


「あぁ、よろしくな。」




文月さんの色が綺麗な“橙”になった。




「はい！」




そして私は多分、“紫”だろう。

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