平成精神病院 . 地下閉鎖病棟

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(中島side)




俺は涼介君の言っていることはさっぱりわからなかったけど、今回は俺の不注意だし
慧君だってたまたま出て行ってしまっただけ。

院長が言っているほど、大袈裟にすることではない。




　「院長、今回のことは俺が悪いです。不注意で慧君が出て行ってしまっただけで。

　 慧君とはしっかり話をするので今日のところは戻ってもらえますか？」


　「……今後は気を付けてくれ」




そう言うと院長は病棟から姿を消した。

慧君はその場に座り込み、涼介君の方を向きながら泣いていた。




　「慧君、一回お部屋に戻ろ？」


　『ごめん、なさっ……もう、しない、からっ……』


　「ちょっと我慢してね」




俺は慧君を抱っこして部屋へ連れて行き、ベッドへ寝かせた。

慧君は少しの間、泣き止まずずっと布団を掴んでいた。




　「怖かったね、ごめんね」


　『けい、わるいの。いやになって、にげたの。……ごめんなさい、』


　「大丈夫だよ。……俺だって、こんなとこにずっといたら嫌になっちゃうよ。

　 慧君はもっと小さい頃からいるんだもんね……」


　『けいは、いつになったらそとへいけるの？』


　「慧君が、看護師たちとちゃんとお話出来て…お父さんのことを思い出しても

　 平気になったら出れるから。…だから、頑張ろうね」


　「……うん、けい、がんばる」




そう言って慧君は静かに眠りについた。

その寝顔はとても幸せそうなのに。なんでこんなにも暗い過去を背負っているんだろう。

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