平成精神病院 . 地下閉鎖病棟

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(薮side)






今、ナースステーションのパソコンを見てるんだけど、不思議なファイルがあった。
『日記』としか書いていないファイル。

なんだろうか、と思って開いてみると何個か日記があった。





　「こんなとこ、早く抜け出したい。

　 外ってどんなところだっけ。

　 あのとき、あんなことしなければ。

　 もういやだよ。おとななんて嫌いだ。」





患者の言葉だよね？……院長が言うには今いる患者が初めての子達らしいから、
…ここにいる誰かが書いたものだろう。





　「ガラスが欲しい。

　 切りたい。

　 切れない。

　 切ったら、あいつが傷付いてしまう。」





切りたいってさ…涼介くんの言葉かな。

隣に座ってる光に見せてみると、ぼそっと呟いた。





　「花瓶」


　「え？」


　「圭人君から聞いたんだ。前に、自分で花瓶を割って切ったんだって。

　 その時、侑李くんが大声で泣いたらしい。

　 それから、……隠れて切るようになったって。」


　「あの子達が…全然わかんないんだよね…」





ここにいる子達は、どれだけのものを背負っているのだろう。
まだ、全部はわかっていないし、わかれそうもない。

俺達に、あの子達の過去の辛さを消し去ることなんて出来るのだろうか。

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