第９９話 仄暗さ掻き消す青春という名の光 ページ13
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釘崎「自分の話をしなさ過ぎ」
「それな」
虎杖「だな」
新田さんに送り届けてもらった所申し訳ないが、もう一度、今度は自分達の足で八十八橋の下へ訪れると、確定演出のように伏黒がそこにおり、背後から口火を切ると静寂と夜に混ざり切らなかった小さな溜め息が聞こえてきた。
橋の上からと下とでは不気味加減が異なり、圧倒的な雰囲気を持つ橋の下は確かに肝試しにもってこいの環境であるといえる。
釘崎「ここまで気付かないとはマジでテンパってるのね」
虎杖「別に何でも話してくれとは言わねぇけどさ、せめて頼れよ。友達だろ」
「もう少し信頼してくれても良いんじゃない？」
一人で抱え込む癖があるのか、将又、私達の身を案じての行動なのか、どちらにせよ馬鹿馬鹿しいことこの上ない。
そんな背を向けたままの伏黒に後ろから声を掛ければ夜風が止むのを待ち、暫くして彼が口を開いた。
伏黒「…津美紀は、寝たきりだ。この八十八橋の呪いは被呪者の前にだけ現れる。本人が申告できない以上いつ呪い殺されるか分からない。だから、」
「今すぐ祓いたい」と漸く自身の気持ちを吐き出した伏黒の抱えているものを理解し、彼の寝たきりの姉と私の病に伏せていた母が無意識的に重なって。ギュッと胸が苦しくなるのを誤魔化すように拳を作った。
伏黒「でも任務の危険度が上がったのは本…」
釘崎「はいはい。もう分かったわよ」
「くどいっつーの」
虎杖「はじめっからそう言えよ」
今更心配する伏黒を三人で適当に遇らい、伏黒にはハッキリと大切な人が見えているのだと実感する。尚更、一人で行かせないで良かった。
「絶対、祓おうね」
伏黒「…あぁ」
私の場合、大切な人は全て失ってしまったが。
それでも、また新たに失くしたくないと強く思える宝物に出会えたきっかけもこの世界なのだから皮肉な話である……恥ずかしいので誰にも言わないけれど。
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作者名：柊ひな | 作成日時：2021年2月26日 21時
