【QK】ターコイズの海に溺れて。【短編集】

星の舟。[茨城県支店]＿izw＿ ページ47

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なんだか訳がわからない。

動画出演メンバー(河村さん除く)プラス山森さんにほとんど命令形で言われたお店に来ている。

あの人たちがあんなテンションになるとは思ってもみなかった。

まあいい。

俺は店の名前を確認して、ドアを開けて入る。

「あっ、星の舟へようこそ！何名様ですか？」

明るい歓迎と共に足を踏み入れることになった。

「一人です」

「かしこまりました、お好きな席へどうぞ！」

明るいが決して大きくなく、胸焼けのしない声だ。

なんとなくでカウンターの隅っこに座る。

最近多忙だったからこうやって落ち着くのも久しぶりかもしれない。

その点ではみんなに感謝と言わざるを得ないのかもしれない。

「ご注文がお決まりになりましたらベルを鳴らすかお声掛け下さい！」

にこやかで明るくて、周りを照らしてくれる存在。

最近は根っから明るい人に会ってなかった気がするからすこし楽しい。

コーヒーとシフォンケーキを注文して店のなかをぐるぐると見回す。

「あ、ベース...」

壁に掛けられていた宇宙柄のベース。

「バンドやってるんです、この店の本店含めた店長たちで」

コーヒーを入れながら、彼女はそういった。

彼女がベースを弾けるなら、俺とギターで一緒に弾けるんだな、とふと思ってしまう。

「お待たせ致しました、コーヒーとシフォンケーキです！冷めないうちにお召し上がりください！」

出されたカップとお皿の印は射手座。

言われた通り、熱いコーヒーを啜る。

とても香りがたっていて美味しい。

すぐに飲み終わり、ケーキも完食してしまった。

「お兄さん、ギター弾いてるんじゃないです？」

「え、そうですけど...」

「やっぱり！指先固くなっちゃいますもんね」

よく見てるなぁ、と感心する。

財布を出してお金を払うと、レシートと一緒になにかが渡された。

「うちのバンドです、よかったら見に来てくださいね！」



「またのご乗船、お待ちしております！」



ここは、幸せをくれる星の舟。



右下の数字の羅列は、そう見ても良いのか。



苗字を教えたことがないってことは、そうだろうね。



*



『星の舟、茨城県支店店長、若月！』
『###-####-####』
『射手座は、大好きな伊沢さんにしか出しません！』



*

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