計画的恋愛術_ko-chan _ ページ27
出会いは、何でもよかった。
出会えればその先は計画通りに進めるだけだ。
東京大学文学部の私は、歴史の授業を取ったときに見たその人に一目惚れした。
調べて回ると、法学部の4年生で動画にも出演しているらしい。
けど、知らないほうが好き。
動画で見るより、本物で見たほうがカッコいい。
情報が流れ込んでくるものより、自分で探すほうが好き。
でも、本当に出会いは偶然だった。
ちょうど人が多いところにいたときだった。
花火大会だったっけ。
男っ気の無い私は浴衣なんて着てなくて、いつものTシャツにパーカーにジーンズにポニーテールをして、最後にいつもつけている眼鏡。
人気の少ないところに行こうと思ったときにはもう遅かった。
ガッ
「あっすみませ...」
カシャン、とぶつかった拍子に掛けていた眼鏡を落とした。
ぐしゃり。
小気味良い音をたて、私の眼鏡は誰かの足に踏まれる。
回収だけしようと手を伸ばしても届かない。
人の波に飲まれ流され、出たところは100m先だった。
走って戻ると、ぺったんこになった私の眼鏡を握っているその人がいた。
「あ、これ、貴方のですか?」
「そうです、ありがとうございま...」
0,1以下の視力で相手の顔を確認しようと近付けると、見覚えのある顔だった。
でも動揺はどこにも出さず、心の中で叫ぶ。
(渡辺さん!)
思わぬ出会いに驚きはしたものの、ここは冷静さを失わない。
「目、見えますか?」
「...多分見えます。ありがとうございます」
新しい眼鏡を作って貰わねば、とバキバキの眼鏡を仕舞いながら考える。
とりあえずは帰ろう。
私は見えない目を凝らしながら、すっかり人がいなくなった道を歩こうとした。
だが、足元にあった木の枝が見えなかった。
片足でその木の枝を踏んで固定し、もう片方で引っ掛かる。
すっ転んで手をつけば、家路が遠くなる気がした。
嗚呼、私帰れるかな。
渡辺さんの計画進める前に一生会えなくなりそうだ。
「...良かったら、家までお送りしましょうか」
「え”っ、いいんですか?」
「その調子じゃ怪我どころじゃ済みそうにないですし」
微笑む渡辺さんの顔がとても可愛いはずなのに、全然見えない。
もどかしさは5億倍だ。
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あむ - これ弾いたことがあって印象に残った一曲だったので……もしやと思い! (2019年10月31日 23時) (レス) id: f3e7d915f1 (このIDを非表示/違反報告)
あむ - そうです!私も吹部所属してます!! (2019年10月28日 14時) (レス) id: f3e7d915f1 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - あむさん» バレましたか...とはいっても演奏したことはなくて。凄いですね。題名だけ少しいただいて、後は適当に書かせていただきました← お詳しいんですね (2019年10月26日 8時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
あむ - 星の船……Star ship かと思って…… (2019年10月25日 20時) (レス) id: f3e7d915f1 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - あむさん» 勘違いじゃないですよ、僕は以前吹奏楽部に所属していました。まあ訳あってやめたんですが。詳しいのは「インディゴの波に呑まれて」という作品の穴埋めで少し語らせていただいています。もしかしてあむさんも吹奏楽所属なのですかね? (2019年10月25日 17時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やまうみ。 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年9月2日 6時