36 ページ36
．
．
東京の夜の街はいつものように
後少しで日付が変わる時間になるとは思えないほど
まだ賑わいを見せる
そんな人の行き交う中を
1人、息を切らし夢中で走った
後輩『先輩って、誕生日に好きな人と過ごしたいとかそういうこと考えたことないんですか？』
誕生日なんて…忘れていた
もうわたしには関係ないと思っていた
誕生日を誰かと過ごすなんて、そんな甘い夢を見たいとすら
もう思うはずないと思っていたの
なのにどうして
会いたい
会いたいよ…
最寄り駅につき、改札を駆け抜けた
日付が変わるまで…あと少し
わたしはあの高層マンションの自動ドアをくぐり
インターホンを迷うことなく押した
"ピンポーン…"
その音に混じるのはわたしの上がった息
心臓が上下に動くのが、苦しいほどに身体に伝わってくる
でも
そんな簡単に偶然は何度も重ならなくて
A「……いるわけ、ないか」
走って上がった息が虚しく響くだけ
そしてそれすらも…次第に小さく消えていった
平野くんのマンションから
とぼとぼと、自宅までの道を歩く
時計は23時50分を過ぎたあたりを指していて
あ…あと数分で、誕生日が終わる
会いたかったな
やっぱり今日、会いたかった
込み上げる行き場のない思いに胸を潰されそうになりながら
渇いた地面ばかりに目を落としていた
だけど…
すれ違って絡まった糸が、解けるように
わたしたちは引き寄せられていたんだと思う
それは、ようやくついた自宅のマンションの前
俯いた視線を、持ち上げた時
A「………っ………どうして…」
マンションのエントランスの前
時計を気にしながら、壁に背を持たれて立つ1人の男に
わたしは目を奪われた
ドクンと、大きく音を立てた心臓
その男は黒髪の短髪で
いつも見ていた、あのアッシュがかったさらさらのストレートの髪じゃない
でも、その姿は紛れもなく
A「…………平野…くん？」
わたしが今、会いたくて堪らなかった人
紫耀「Aさん！！」
震えた声で、彼の名前を呼んだ
その声に彼はパッと顔をあげ振り返ると
紫耀「よかったぁ、間に合った」
そう言って満面の笑みでくしゃっと笑った
そして…
紫耀「お誕生日、おめでとうAさん」
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たむ - もうこの作品の虜です！！続きが楽しみすぎる！！ (2021年7月4日 4時) (
レス) id: 7855f798e1 (このIDを非表示/違反報告)
Azuki(プロフ) - part2一気に読みました！再開してくれて、もう一度書く気持ちになってくれて本当に良かったです。素敵な作品なのでこれからも楽しみにしています。 (2020年3月23日 22時) (レス) id: 8005b02827 (このIDを非表示/違反報告)
さおちゃん。(プロフ) - 楽しみに待っています！ (2020年3月23日 20時) (レス) id: 5d40298e40 (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - part2、再スタートおめでとうございます。そして、再掲載してくださりありがとうございます。平野さんとの距離が絶妙で、胸が苦しくて…毎日の楽しみです。これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2020年3月23日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ちづる(プロフ) - 更新ありがとうございます！ゆっくりでいいです(^^)楽しみにしてます！ (2020年3月23日 1時) (レス) id: 74fbd2e6c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わわ | 作成日時：2020年3月22日 23時
