3 ページ3
．
．
わたしも…会いたい
その言葉を素直に伝えるには
まだ時間が足りなかった
喉の奥底で詰まったその言葉を
唇から伝う前に、飲み込んでしまう
紫耀「…でも迷惑なら、やめる」
そうやって…強引なくせに
相手の気持ちをいつもちゃんと確かめる
ちゃんと思いやる
その優しささえも、ずるいって思う
A「………丁度、もう帰るところだったし…
…今からでもいいなら…」
でも素直に、会いたいと言えないわたしが
ついた嘘も…ずるかった
紫耀「まじ？よっしゃー！ じゃあ、迎えにいく」
A「……うん」
わたしと山田くんは、当然、まだ帰るところでもなんてもなかった
会いたいの代わりの、情けない嘘
山田くんには申し訳ないと思いながらも、別の予定でどちらかが先に帰ったりなんてことはお互いよくあったし
山田くんならなんてことなく許してくれるだろうと
電話を切ると、急いで先に戻り
わたしは荷物をまとめ始めた
A「山田くん…わたし用事思い出してっ……
ごめん。今日はもう、帰るね…」
お金をテーブルに置き、慌てて席を立ったわたし
"おっけー"なんて、いつものそんな軽い返事がてっきり返ってくると思っていた、のに
山田「………ダメ」
山田くんの手が、帰ろうとしたわたしの手首を掴んで引き留める
A「……っ…山田くん？…」
こんな山田くん、初めてみる
熱くなった掌が
わたしの手首をきゅっ…と握った
山田「……なんて。嘘だよ笑
いってらっしゃい。金はいーから」
でも、すぐに手は離れ
いつもの山田くんが目の前で悪戯っぽく笑ったから
ほっとして胸を撫で下ろす
A「…やめてよもー笑 びっくりするじゃん。
本当にごめんね。今度また飲みに行こ」
いいよ、と返されたお金をもう一度テーブルに置き直し、お店を出ると
彼との待ち合わせの場所まで
走りづらいヒールで駆け抜けていった
早くしなきゃ…平野くんは突然気が変わって
どこかに消えてしまう気がして怖かったから
だって、きっと平野くんよりもわたしのほうがずっと
会いたいって、思ってる
．
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たむ - もうこの作品の虜です！！続きが楽しみすぎる！！ (2021年7月4日 4時) (
レス) id: 7855f798e1 (このIDを非表示/違反報告)
Azuki(プロフ) - part2一気に読みました！再開してくれて、もう一度書く気持ちになってくれて本当に良かったです。素敵な作品なのでこれからも楽しみにしています。 (2020年3月23日 22時) (レス) id: 8005b02827 (このIDを非表示/違反報告)
さおちゃん。(プロフ) - 楽しみに待っています！ (2020年3月23日 20時) (レス) id: 5d40298e40 (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - part2、再スタートおめでとうございます。そして、再掲載してくださりありがとうございます。平野さんとの距離が絶妙で、胸が苦しくて…毎日の楽しみです。これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2020年3月23日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ちづる(プロフ) - 更新ありがとうございます！ゆっくりでいいです(^^)楽しみにしてます！ (2020年3月23日 1時) (レス) id: 74fbd2e6c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わわ | 作成日時：2020年3月22日 23時
