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話を聞き終わった大昇の顔に効果音をつけると、
『ポカーン』
まさにこれ。
「わかるよ、わけわかんないよね、わかる。」
『…マジで…ドラマかなんか?』
「それが現実なんですよね」
『…他人事にしか思えなさ過ぎるんだけど…』
そりゃあ、ねぇ?
婚約者を発表するパーティーを乗っ取るってどんだけ非現実的なんですかって感じですよね…。
だって私たち、パーティーになんて無縁だし。
『でも、ひとつ絶対に確かめなきゃいけないのはさ、平野の気持ちだよ』
「…うん…」
『俺と付き合って、完全に浮所のこと忘れられたとは思ってないけど…やっぱりまだ、好き?』
「……」
好き、なのかな…
どうなんだろう。
好きかもしれないし、固執してるだけで、それで勘違いしてるのかもしれない。
だけど。
「私にとっては、2人とも、大昇も先輩も、大事な人なの」
『…うん』
「先輩は、私にいろんな感情を教えてくれた。私の青春は先輩です!って断言できるくらい。でもね、大昇は、こんな私を好きでいてくれて、傍にいてくれて…安心するの。だから、2人とも傷つけたくない」
これって、欲張りかな。
私の、我儘かな。
『俺は、平野が幸せなら、それでいい。っていうか、今のままじゃ幸せじゃないじゃん』
「え、どういうこと?私今幸せだよ?超幸せ。大昇みたいな素敵な人どこ探してもいないんだけど!!!!」
『……おぉ』
「ちょっと照れないでよ!!!私まで恥ずかしいじゃん!!!」
『ごめんって笑 うれしかったから…。俺のこと、好き?』
大昇のこと、好き……、?
うん、好きだよ。だって私の最高の彼氏だもん。
かっこよくて、優しくて、私のこと一途に思ってくれてて、おまけに料理も上手なんだよ?
「っ…わ、たし…」
すき。
たった2文字なのに。
どうして、言えないの…
『……はは、平野ってずるいよなぁ…』
「たいしょ…」
いつか見た、寂しそうな、悲しそうな…そんな顔で、大昇は笑っていた。
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作者名:ぬれおかき | 作成日時:2021年7月6日 0時