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振り向いてしまった。
名前を呼んでしまった。
『平野、…っ、俺、』
「先輩…?」
なんで先輩がここに?
なんで私を呼んだの?
何を…言おうとしているの?
聞きたいことは次から次へと溢れてくるのに、言葉にできなくて。
『何してんすか』
「っ、たい、しょ…」
『何話してるんですか?先輩、婚約者いるんですよね?こんなとこ、誰かに見られて大丈夫なんですか?…しかも、元カノなんて』
どうしよう、…なんで今!?
バッドタイミングすぎる…
「…大昇?」
お手洗いから出てきた大昇は、とても冷めた目をしていた。
見たことがない顔だった。
今まで、見てきた優しい大昇じゃなかった。
『じゃあ、失礼します。』
『…ごめん、』
「先輩、っ」
初めて見た先輩のスーツ姿。
そして、フロントにあるホテルのロゴに入ってあったのは、「ukisho」の文字だった。
…まさかここ、先輩の会社のホテル…?
『行こ』
「あ、…うん」
握られた手に驚いて名前を呼ぶと、小さく『ごめん…』と謝罪された。
あ、そういえば、初めて手、繋いだ…
『ごめん』
「え?何が?」
歩きながらまた謝る大昇。
寧ろ謝罪すべきは私なのでは…?
…背徳感感じてる時点でアウトじゃん私。
『余裕なくて…ごめん、』
「えっと…私の方こそごめんね、でも何も話してないから!ほんとだよ」
『……うん』
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『やっぱりまだ…』
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作者名:ぬれおかき | 作成日時:2021年7月6日 0時