Memory Fragment3 ページ3
(※少し暗めです)
┈┈┈
ぽたり、とまだぬるい赤い粘液が指先から滴り落ちた。
昨晩家族を失った。とある住宅街、しん、と眠る町中にただ首だけが添えられたかの様に地面に置き去りにされていた。血痕が辺りのアスファルトを紅く染め上げ、私はそっとその首を抱き締めるように手に取った。
イルミから電話があった。
親父が、君の所の団員をやったみたいだよ。と、身体が置かれていたのは唯一の気遣いだった様だ。
その故人は団員No.8を名乗っており、私の面倒を良く見てくれていた。べたりと甘えてばかりの私に、いつも優しく微笑んでは手を差し伸べてくれたのだ。
"箱"からハンカチを取り出して、汚れた手を拭う。拭って、何度も拭ってを繰り返す。濡れていた両手は赤が消え去っても酷く汚れているように感じた。
「A」
一つ、愛おしい家族が私の名を呼ぶ。声を聞いた途端、堰を切ったようにぬるい涙液が眼窩を覆い溢れ出た。ぽたり、と頬を伝い落ちる。
『クロロ』
一つ、愛おしい家族の名を呼ぶ。許しを請うような、情けなくて酷く縮こまった声音に、思わず呆れたように笑ってしまう。
『meだって、同じ事をしてるのにね』
そう、自分だって人の命を奪っているのだ。生活費を稼ぐ為？私怨故？理由はどうであれ、すべて同じ事。けれど、どうにも、どうにも家族を喪う事には慣れない。慣れてはいけないのだと、感じてしまう。そして自身も奪っている側なのだと、身体の芯までに言い聞かせる。
ふわり、とクロロの香りと温もりに包まれる。斜め上を見上げれば、眉を微かに潜めた表情が視界に写った。親指で、柔らかく目元を沿うようにして涙を拭われる。
「仕方の無い事だ。けれど、忘れてはならない」
『忘れないよ』
「A、もっと非道になれ。一々心を痛めては駄目だ」
『クロロだって、痛い癖に』
その表情を見れば痛む程に伝わる。けれど、そう。仕方の無い事。私達は事あるごとに首に懸賞金が掛けられるのだ。そうであって仕方の無い事をして、生きている。
『クロロは、ずっと生きていて。meと一緒に、痛いって言い合える様に』
ぎゅ、と胸元を握り締める。また請うように、彼が消えない様にと嘆いては言葉を紡いだ。クロロは小さく頷く。そして、柔らかく微笑む。
「仕事は終わった。帰ろう」
抱き締めた腕を解いては歩みを進め、振り返っては手を差し伸べてくる。それを手に取ると力強く握っては同様に歩みを進め始めた。
どう足掻いても、進むしかないのだ。
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あるぱか(プロフ) - mearusanさん» mearusan様、ありがたいお言葉感謝いたします。これからもちまちまと更新していきますので、何卒よろしくお願いいたします。 (2022年11月30日 18時) (
レス) id: 815005bab2 (このIDを非表示/違反報告)
mearusan(プロフ) - コメント失礼いたします！イラストも素敵で、めちゃめちゃに面白いです。更新頑張ってください！ (2022年11月27日 19時) (レス) id: 4f9ddc0e3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あるぱか | 作成日時：2022年11月19日 20時
