この手に余る幸せを【約ネバ/短編集】

優しさは毒3【ノーマン】(菫の花) ページ15

怒った様な、そんな声音で彼は言った。


｢離してほしいんだったら教えてよ…僕を避ける理由。｣


ビクッと肩を揺らし過剰なまでに反応した私はすっと目線を逸らす。

すると彼はこっちを見て、と私の頬に優しく手を添え無理矢理にでも目線を合わせられる。


｢さっきの寝言…本当なの？僕が大好きだって。｣
｢なっ！寝言!?そ、そんなこと言ってたわけ…｣

｢言ってたよ。もしそうなら避ける必要なんてないよね？｣


嫌だ、駄目だ、絶対に言わない…言ったら全てが崩れちゃう。


泣くな…耐えろ、耐えろ耐えろ耐えろ！


目頭が熱くなりじわっと涙が浮かぶ。どうやら私の身体は言う事を聞いてくれないようだ。

震える口が勝手に開き今までためていた物全部を吐き出すように喋っていく。



｢そうだよ、確かに私はノーマンが好き。｣ ｢だったら…｣


｢だから苦しいんだよ！私の好きはノーマンが思ってる家族としてじゃない！

貴方はエマが好きでしょう？それと同じ気持ちよ!!
それなのに…貴方は誰にでも優しくして私ばかり馬鹿みたいに喜んで、勘違いして…


苦しいの、辛いの!!貴方の優しさが私には毒なの…ッ！


冷たくすれば貴方はもう私に優しくしないだろうって思った。だから避けてたのに……

貴方はまだ優しくする。お願いだからこれ以上…勘違いさせないで。｣


ぽたぽたと溢れる涙に彼の緩んだ手の力。


私は咄嗟に手で顔を隠し、目元を拭い、必死に涙を止めようと試みる。

でも駄目だ…1回溢れたものを止めるには難しい。


ほんと、馬鹿みたい。


そう思った途端、手首を掴まれ体が引き寄せられると暖かい物に包まれる。


｢……へ？｣

｢僕が何時、エマの事が好きって言ったの？｣


間抜けな声を上げた私に構わず彼はそう尋ねてきた。

確かに言ってないけど、見てれば分かる、と答えると彼は抱き締める力を強くした。


｢馬鹿だなぁ…言ってないじゃん。この際だから言うけど……


僕の好きな人はAなんだよ。｣


へ、とまた間抜けな声が口から漏れる。
ノーマンは私から体を離すとすっと目を閉じ顔を近付けて来た。


｢ん…!?｣

ふにっと唇に柔らかい感触…私の開いた口を塞ぐ様に彼は自分の唇を重ねる。

そして数分、そっと話された唇に私の顔はきっと真っ赤。


そんな私を見て彼はクスッと笑う。



｢返事を聞かせてくれないかな、A？｣



返事？そんなの決まってる。






｢私も貴方が…大好きっ!!｣









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