色恋沙汰 【ya-ya-yah短編】

2 ページ4

冷たい風が頬をなぞった



もう冬が近いんだな。



隣を歩いてる光が寒そうに鼻をすすった。





いつもは四人で歩いてた駅までの道を二人で歩く



広く感じる道を無言で歩いていた



その沈黙を破ったのは光。



光「デビューってもっと嬉しいものだと思ってた」


少し下を見ながら呟いた。


「うん。」









デビューからバタバタ忙しくなり、落ち着いて光と話すのは久しぶりだった








…いや、ふたりとも落ち着いてなんかなかったんだと思う。







光「俺が夢見ていたデビューはこんなのじゃなかった」


「…」


光「ちゃんと太陽や翔央がいて、」


「光、」


光「ライブの企画なんかもして、たまに喧嘩もするけどちゃんと分かりあえる」


「光。」


光「俺が…、なりたかっ、たのは…」




立ち止まる俺に合わせて、光の足も止まる。


光の濡れた瞳だけがすべてを語っていた。


光「薮…っ、お、れ…ずっと」

「知ってるよ」


全部、知ってる。

光の望んでいることも、

光が誰を想ってきていたのかも。


光「薮も、おんなじ気持ちなんじゃないの…」

「…うん」


俺の気持ちも光と同じくらい見透かされていた。

当の本人たちは気付いてなかったみたいだけど。



「太陽だと思っていいよ」



光「…薮も、翔央だと思っていいよ」






________________


光「んっ、…ぁあ」

お互いはじめてだった


暖かさもなにもないはじめてだった。


光「…はっぁ、たい、よ…っ！」


光は目をきつく瞑り、この行為を太陽とのことだと思わせていた



俺は翔央とのことだと思いたかったが、光みたいに目を瞑るわけにもいかず…。

「気持ちいい」って「もっと」って言ってくれてるのにただただ空しくなるだけだった。




光の目から涙が零れた

それにつられるように俺の涙が頬を伝う


この涙がどんな気持ちで零れた涙かは、俺も光も知らなくていい


この涙がすべてを流してくれたらいいのに
そんなくだらないことを考えていた




恋愛はとても綺麗なものじゃない

空白をほかのもので埋めるような。

一度黒が入るともう二度と真っ白には戻れない




今日もまた行き場のない想いをぶつけ合う




こんなことをして何が変わるんだよって？
そんなこと分かってるよ


確かな記憶を消すにはこの方法しか思いつかないんだよ









俺も光も、自然と少しずつ深くなっていく傷には気付かないフリをした。




fin.

あとがき→

3→←SCARS yb×hk

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す