140.余韻 -よじゃ- ページ43
彼の「余韻」が。
こんなにもはっきり残るものなのかと、もうどうやっても離れない甘苦しさに、バスタブに沈めていた身体をさらにぶくぶくと、顔半分までを湯の中に沈めた。
火照る頬が、自分でも照れくさくて。
ぎゅっと目をつぶると、また彼の声と、触れた気配が蘇る、悪循環。
ぶくぶくぶく…
邪念を絞り出すように湯の中に息を吐いて、息を止める。
んはぁっ!
ぎりぎりのところで大きく息を吸い込めば、頭がクラクラした。
「…ダメだ…のぼせる」
そろり、湯の中から身体を引き上げて、少し冷えた浴室の床を歩く。
扉を開けたらこもっていた湯気が一斉に外へと逃げ出していく。
その湯気の中で、目の前の鏡に映った自分は、やっぱり真っ赤で、だらしない顔していた。
――今日仕事が終わってから、会える?
…僕のことだけしか、考えられないようにしてあげる。
なんてことを言うから。
今日は…なんて甘い緊張感も少し持っていて。
けれど、深夜の作業を終えて、次への展開に俄に緊張が増した私の予感とは裏腹に、自宅前での別れはあっさりしたものだった。
拍子抜けした私の戸惑う顔を見て、ソンミンは可笑しそうに笑っていたっけ。
SM「僕、そこまで狼じゃないよ」
なんて、きっと筒抜けている私の期待は、随分と弄ばれている…。
SM「ゆっくりね」
小首を傾げて、意味深に笑む。
その作為的な仕草さえ、あしらう余裕さえ無くて。
こわばった顔のままロボットのように手を振った私を、またソンミンはまた笑って、去っていった。
結局、何も無くとも、こんな風に何度も思い返しては、ずっと頭の中がソンミンでいっぱいになってるんだから。
ある意味、彼の宣言は、正しかったとも言えるけれど。
ふぅ、と少し敗北感混じりの溜め息をついて、リビングへと戻れば、着信を告げる携帯がある。
髪を拭く手を休めて、手にすれば、ソンミンからのメッセージ。
見てしまえば、落ち着いていたはずの頬が、また酷く緩んでしまった。
僕のお姫様〜!今何してる?
あはは、別れた時のヌナの顔が忘れられなくて、笑いすぎてお腹が苦しい。
緩んだ顔が戻らなくって、弟達の舌打ちがうるさいよ。
でも気にしない〜!せいぜい羨ましがってればいい。
あぁ…、なんかすごいおかしな内容になってる?
でも気にしない〜!はは、見たら返事して!
「…浮かれてる」
自分だけじゃないって思えたら、もっと愛おしくなるなんて。
ほんと惚れた弱みは天井知らず。
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舞桜(プロフ) - 素敵な作品に出会えた事が嬉しいです。これからも書き続けてください。 (2015年11月29日 13時) (レス) id: 03ef754c9c (このIDを非表示/違反報告)
井上よじゃ(プロフ) - 全然気づかず…恐ろしくお返事が遅くなりまして申し訳ありません!!(土下座)いたわりのお言葉ありがとうございます!今回の連載はいい思い出になりました♪共同執筆はなかなか難しいですが、気分はいつも2人で一つ、でこれからも頑張ります♪ありがとうございます! (2014年11月29日 23時) (レス) id: cae000c27e (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - あかねさん» こんにちは、ありがとうございます♪完結まで・・待ちたい・・(汗)すみません〜、私のせいでずいぶんお待たせしましたね(><)呆れず読みに来てくださって本当にありがとうございます!最近は企画する時間もなくて・・申し訳ない(汗)当面、自分の連載がんばりますww (2014年6月22日 9時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - お二人の単独作品も大好きですが、新たな企画ものをこっそり期待しています。いつも素敵な作品をありがとうございます(^^) (2014年6月18日 22時) (レス) id: c6e7bfcddb (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 連載お疲れさまでした!お二人のチームプレイは抜群ですね。私は完結まで待って一気読みしたいタイプなので最終章は目次を見ながらワクワクしていました。改めて、もう一度最初から熟読して楽しみます~(^.^) (2014年6月18日 22時) (レス) id: c6e7bfcddb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちづ・よじゃ | 作者ホームページ:http://aojirushi.net/
作成日時:2013年2月26日 23時