ちづとよじゃのヌナ短編【05】-SJ-

恋する男子(5/6) ページ6

聞かせるバラードも、切ない歌も、好きだけど。
ヌナと歌うのは、ポップなラブソング。

僕のパートが終わったあと、ブースに入ったヌナを見つめる。



・・きれいだ。


びっくりするぐらい、きれいだ。


隣にいる、カメラに向かって愛嬌を振りまいて。
唇を突き出して、
カメラを指さして。


ウインク。



・・今ので確実にカメラの前のペンはやられましたよ、ヌナ。
その映像が採用されて僕が一番に見れますように。(←)

歌も上手なヌナは難なくレコーディングをこなして。


一緒に歌うパートでは、一緒にブースに入る。



・・どうしよう、にやっとする・・。


いや、いいんだけど。
楽しそうに笑い合い、歌う二人の様子をカメラが撮影する。



・・一生の記念にします。(←)


それはそれで、記念にするけど。



できることなら今後、
ヌナにメールを送れるぐらいの友人的ポジションにつきたい。

この仕事は最初で最後のチャンスだ。


レコーディングが順調すぎて、このまま終わってしまいそう。
どうしよう、わざわざミスをすべきか？(←)


いや、仕事ができない男だと思われてしまう。
正直、歌が一番自信があるんだし。
ここはソツなくこなすのが得策か？



・・夢のような時間は飛ぶように過ぎて。
もう、別れの時がやってくる。


・・燃え尽き症候群により、
明日から僕の顔色はないものと思っていただきたい。(←)


どれだけこのスケジュールを心待ちにしてたことか。
この前のバラエティーなんか比じゃない。


KH「・・Aヌナ、あの。」

「ん？」

KH「あ、・・いや、・・その、」

「なあに？(笑)」

KH「アドレスを。聞いてもいい、ですか・・・？」


もはや語尾は発音できなかった。(←)


思い切り目をそらして。
思い切って挑戦しようとした、
『仲良くなりたいんです！とかいうすがすがしい年下の男』的な聞き方なんか到底できなかった。



「・・。」


ああ、ヌナ、黙らないで。

困ってる？
ダメ？

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