潮騒に消える秘密(2/7) ページ27
前と同じパーキングに車を止めれば、あの夜を思い出したヒチョルが、
「カモメ…いないよな…」
と冗談ぶって怖がる素振りを見せる。
「セウカン、買ってくる?」
「お前も懲りないやつだなぁ」
「振りかと思って」
「んなわけねーだろ」
笑いながらヒチョルが車のドアを開ければ、とたんにしっとりと水分を含んだ風が車内に流れ込んでくる。
同じように車外へと出れば、思ったよりも強い風が髪をさらった。
肌寒さに腕を抱えれると、車越しに、あー、とヒチョルが大きく伸びをして、海へと歩き出す背中が見える。
彼の少し後ろを歩きながら、見つめる夜の海は、前よりも闇の色が濃い気がした。
それが季節のせいなのか、月の明るさのせいなのか、分からない。
見上げた夜空には、薄い月が頼りなさげに浮かんでいた。
砂浜へ降りる手前で振り返ったヒチョルが、歩みの遅い私に足を止める。
とっとと歩けと、文句を言われるのかと思ったのに、ただ黙ってじっと待つ、その姿に、こちらも小走りになる。
「寒いのか?」
かけられた言葉は、予想外に優しいものだった。
「こんなに風が強いと思わなくて」
普通のデートだったなら、いや、デートでなくても、こうやって男女ふたりきりのシュチュエーションならば、
「これ、羽織れよ」
と、その着ている上着を差し出してもいいところだ。
それが、このキム・ヒチョルに限っては、あり得ないことだってことも、知っている。
「アホだなぁ」
楽しそうな笑い声が聞こえてきて、風邪引いても知らねーぞ、と分かりきった忠告を重ねてくるヒチョルの隣に並んで、そのまま追い越した。
「風よけくらいにはなってよね」
背中に向かって、なんで俺が?とぼやく声が聞こえてくるけれど、気にしない。
ヒチョルには悪いけど、これだけ風が強い中、ゆっくり海を眺めるなんて出来そうもない。
少しだけこの景色を楽しんで、あとは温かい場所に移動させてもらおう、とこれからの予定を頭に浮かべながら、波打ち際まで来た。
ヒチョルは当たり前のように、風上に立ってくれた。
そんな優しさが、いつも胸に痛い。
291人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちづ(プロフ) - くみょくさん» こんばんは、ありがとうございます〜♪・・ですよね!!私もドンちゃんなら襲われちゃって手に入れたいです(←何の話ww)楽しんでいただけてうれしいです♪ (2014年3月7日 23時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
くみょく(プロフ) - うわー(T_T)襲われてそれダシにしたいーww 久々素敵ドンへに会えました♪ちづさんありがとうごさいます^o^!! (2014年3月6日 0時) (レス) id: c316030326 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - ミツさん» こんばんは、ありがとうございます〜♪やっとアップできました〜(泣)うれしい、ミツさんに愛されちゃったww (2014年3月6日 0時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - 凛々さん» こんばんは、早速ありがとうございます〜!今回は悩みに悩んでこのドンヘです(笑)楽しんでいただけてうれしいです♪♪ (2014年3月6日 0時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
ミツ(プロフ) - あ~!しあわせです!あぁ、最高です。ちづさん、あいしてます!! (2014年3月5日 23時) (レス) id: 611205b7a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちづ・よじゃ | 作者ホームページ:http://aojirushi.net/
作成日時:2013年6月4日 23時