潮騒に消える秘密(1/7) ページ26
「出られるか?」
海へ行こうと、告げられたそのシーンが、まるでデジャブのように感じて。
随分と昔に、同じように深夜にやって来た彼を思い出して、思わず笑みが溢れる。
「今から?」
図らずもこちらも同じような答えを返してしまって、気付いたヒチョルが俯きながら小さく笑った。
「あぁ」
倣うように同じセリフを返される、それだけで、胸の奥がおかしいくらいにキュンと痛んだ。
どんなに時を経て、どんなに身なりが変わっても、彼自身は変わることがない。
彼にしかないいくつかのパーソナリティに触れる度に、ヒチョルを強く感じて、少し泣きたい気持ちにもなる。
彼の車に乗るのは、何時ぶりだろう。
ここ半年はほとんど仕事漬けのようなだった彼と、こうしてゆっくりした時間を持つこと自体が久しぶりで、不思議な感じがする。
その前の2年は、スキャンダルを嫌った彼が、女性と2人になること自体を、避けているようだった。
流れる音楽も、いつかとは変わってしまった。
私も知らないどこかのガールズグループの曲を、楽しそうに口ずさむ姿は、相変わらずだけれど。
時折混じってくる懐かしい歌が、耳には心地よく馴染んだ。
「そういえばこの前ね」
ヒチョルも知る、友人の名前を出したりして、ぽつりぽつりと繋いでいく会話が、夜に溶けていく。
じっと見つめる夜の街灯が、いくつも通り過ぎては懐かしい場所へと、2人を運んでいく。
以前海を訪れたあの時、ヒチョルは帰りの車内で「泣きそうなことがあった」と言っていた。
もしかして、同じ場所ヘ向かう今日も、同じ理由で誘われたんじゃないだろうか、と、少し不安になって、運転席の横顔を見れば、勘の良い彼が気付いてこちらにちらりと視線を投げる。
「なんだよ」
「…大丈夫?いろいろ…忙しい?」
「別に、相変わらずだよ」
「…そう」
返した相槌を、彼は鼻で笑った。
「思ってることあるんなら、はっきり言えよ。俺がそういうの嫌いだって知ってるだろ?」
「また泣きそうとか言い出すんじゃないかと思って!心配しただけ!」
「なんだよそれ、あるわけねーだろ、ガキじゃあるまいし」
あんたがこの前言ってたんじゃない!ってセリフは、喉まで出かかって、溜め息に変えた。
「もう心配してやんない」
「あぁ、心配するだけ無駄だって」
…ヒチョルのパボって、小さく小さく呟いた声は、やっぱり地獄耳の彼に拾われて、頬がちぎれてしまうんじゃないかってくらい、抓られた。
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ちづ(プロフ) - くみょくさん» こんばんは、ありがとうございます〜♪・・ですよね!!私もドンちゃんなら襲われちゃって手に入れたいです(←何の話ww)楽しんでいただけてうれしいです♪ (2014年3月7日 23時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
くみょく(プロフ) - うわー(T_T)襲われてそれダシにしたいーww 久々素敵ドンへに会えました♪ちづさんありがとうごさいます^o^!! (2014年3月6日 0時) (レス) id: c316030326 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - ミツさん» こんばんは、ありがとうございます〜♪やっとアップできました〜(泣)うれしい、ミツさんに愛されちゃったww (2014年3月6日 0時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - 凛々さん» こんばんは、早速ありがとうございます〜!今回は悩みに悩んでこのドンヘです(笑)楽しんでいただけてうれしいです♪♪ (2014年3月6日 0時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
ミツ(プロフ) - あ~!しあわせです!あぁ、最高です。ちづさん、あいしてます!! (2014年3月5日 23時) (レス) id: 611205b7a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちづ・よじゃ | 作者ホームページ:http://aojirushi.net/
作成日時:2013年6月4日 23時