ちづとよじゃのヌナ短編【05】-SJ-

イェウクと旅しよ、ぽかぽかと(16/16) ページ23

「なに、流されちゃったの？」


呆れたようなソンミンに、電話に向かって苦笑いを返す。

彼の反応はきっと他の誰もが想う、きっともしかしたらドンヘさえ、心の隅で感じている、想いだと思うけれど。



これからの未来が、そうじゃないって証明してくれるから。

その自信があるから。



だって、日を追うごとに、秒針が進むごとに、心奪われていく。


もう、彼を選ぶ前の自分が思い出せないくらい。



「だって、愛に変わっちゃったんだもん」

「...…呆れる…あんまり初めから熱上げ過ぎると、すぐに飽きて捨てられるよ？」

「そうかな？でも今が楽しいし、いいでしょ？」

「相変わらずだね、ヌナのそういうとこ」

でもそんなところがさ、意外とドンヘと似てるんだよ、と優しく告げた声に笑みが溢れる。


「ありがと、ソンミナ」


実は、私も最近それに気付いたんだよねって言葉は、惚気話みたいだから、そっと胸にしまった。


「うわ、ドンへ来た。なんなのその嗅覚。ほんと怖いよ、スペインだって絶対バレない自信あったのに」


分かったから、変わるよって、電話の向こうで騒がしいやり取りが聞こえて、さっき電話を切ったばかりのドンヘが、楽しそうに私の名を呼ぶ。


「A、ヒョクがさ、明日一緒に行っていいかって。いいよね」

「いいよ」

「場所分かんなかったらさ、すぐ電話して」

「大丈夫、実はそこ、ヒチョルと行ったことあるから」

「え？…あ、そう」

「…ヤキモチ？」

「別にそんなことないよ、全然…」

「楽しみにしてるね、早くドンヘに会いたい」


彼を元気づけるための言葉が、図らずも胸を締め付ける。
その甘い痛みに、今すぐにでも飛んで行きたくなった。



「ねぇ、今度どこかに旅行に行かない？」

「いいね！暖かいとこ行きたい！Aはどこがいい？」

「どこでもいいよ、ドンヘと一緒なら」



きっと、どの旅よりも、楽しい旅に、なるはずだから。





end

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