イェウクと旅しよ、ぽかぽかと(8/16) ページ15
ロウソクを消したら、大騒ぎしながらシャンパンの栓を開けて、難しい3等分に揉めながらケーキを切り分ける。
「ねぇ!せっかくだから記念の写真撮ろうよ!」
手を叩いて、楽しそうに携帯を取り出したリョウクに、誘われるまま隣に寄り添う。
「ヌナ、もうちょっと寄って」
躊躇いもなく腰に回された手は少し緊張するけれど、引き寄せられるまま、頬が触れそうなほど近づいて。
その瞬間
はっと。
不意に蘇った、既視感に
息を飲んだ。
いつかの旅で、同じように写真を撮ろうと顔を寄せ合った、
ドンヘの顔が、
思い浮かんでしまったから。
「ヌナ、どうしたの?」
固まった私を、不審げに振り返ったリョウクは、そのまま携帯を放り出して、両頬をぐいっと掴む。
「また変な顔!」
「あ、いはいよ、りょうくー」
「もうしないでって、言ったでしょ!」
「んん、はなひてー」
「バカ!もうほんと、バカ!」
文句をぶつけながら、それでもぎゅっと抱き締められた、その腕は、とても強くて。
感じた優しさに、思わず泣きそうになる自分を、必死で押し留めた。
「…ごめんね、リョウク」
こんなに私の反応に過敏なのは、きっと彼もきっかけを作ってしまった自分に、後悔を感じているからに違いなく。
そんなの想いやり過ぎだって、本当なら笑い飛ばしてあげなきゃいけないはずなのに。
せっかくの、お祝いの席だったのに…。
ごめんねと、もう一度肩口に呟いて、そっと抱き締め返すと、その背をぽんぽんと撫でた。
「もう絶対変な顔しないから、約束する」
だから早くケーキ食べよ?って、明るく誘えば、腕を解いたリョウクの頬は、膨れていた。
「ヌナにはケーキあげない」
「えー、そんなー」
「ヌナは食べる資格なし!」
「そんなこと言わないで。ジョンウン、助けてよ」
「苺くらいはいいんじゃないか?」
「苺だけ?!」
「ダメだよ、ヌナなんかこれで十分」
無理矢理口に放り込まれた赤い実は、酸っぱい!と、思わず顔が歪む。
それを見て大笑いするリョウクに、仕返しするように、こっそり目の前の苺に手を伸ばす。
「ちょっと!それ僕の苺!」
「んー、あまーい」
「なんなの!ヌナの苺、ちょうだい!」
それからは、大人気ない攻防を繰り広げながら、奪い合うようにケーキを食べて。
シャンパンを傾けながら笑い合う中で、いつの間にか、おかしな空気は消えてしまった。
イェウクと旅しよ、ぽかぽかと(9/16)→←イェウクと旅しよ、ぽかぽかと(7/16)
291人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちづ(プロフ) - くみょくさん» こんばんは、ありがとうございます〜♪・・ですよね!!私もドンちゃんなら襲われちゃって手に入れたいです(←何の話ww)楽しんでいただけてうれしいです♪ (2014年3月7日 23時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
くみょく(プロフ) - うわー(T_T)襲われてそれダシにしたいーww 久々素敵ドンへに会えました♪ちづさんありがとうごさいます^o^!! (2014年3月6日 0時) (レス) id: c316030326 (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - ミツさん» こんばんは、ありがとうございます〜♪やっとアップできました〜(泣)うれしい、ミツさんに愛されちゃったww (2014年3月6日 0時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - 凛々さん» こんばんは、早速ありがとうございます〜!今回は悩みに悩んでこのドンヘです(笑)楽しんでいただけてうれしいです♪♪ (2014年3月6日 0時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
ミツ(プロフ) - あ~!しあわせです!あぁ、最高です。ちづさん、あいしてます!! (2014年3月5日 23時) (レス) id: 611205b7a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちづ・よじゃ | 作者ホームページ:http://aojirushi.net/
作成日時:2013年6月4日 23時