私の4人のお兄ちゃん (ページ7)

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貴久Side

嫌がるAを流したり宥めたりしながら、病院へ来た。

名前を呼ばれ、診察室に呼ばれる。

「Aー、お熱上がっちゃったんだって？
可哀想に…」

目の前の慶にぃは、相変わらずガムシロップを飲み下したみたいに甘い。

言うことを聞かずに登校したことについて、小言の1つでも言えよ。

そんな慶にぃを前にしても、診察室の中ということでAはガッチガチだ。

「…かえる」

「帰しません。慶にぃ、サッサとやっちゃって。」

「はいはい。
ちょっともしもしさせてね。」

慶にぃが聴診器を構えたのを見て、Aは助けを求めるように俺を見た。

生意気盛りだけど、まだまだ子供だ。

「痛くも苦しくもないだろ？」

頭をポンポンと撫でてやり、Aのブラウスの裾を制服から出した。

「ちょっと喘息怪しいな。返ったら吸入して。
次、喉ね。」

慶にぃも早く終わらせてやった方が良いと思ったらしく、Aの口の隙間にサッと板を差し込んで開かせ、喉を診た。

突然のことに、Aが涙目で慶にぃを睨む。

「慶にぃ、キライ。」

そして、慶にぃも涙目になる。

仕方ない、フォローしてやるか。

「Aのためにやったんだろ？
そういうこと言わない。」

さっき叱った効果がまだ残っていたのか、Aは思いの外素直に謝った。

「風邪だね。
ちゃんと休めば良くなるよ。
お薬出しておくから、頑張って。」

俺の顔を見て頑張ってと言った慶にぃに、嫌な予感がする。

後から貰った薬を見れば、漢方薬に鼻スプレーとAが大嫌いな薬二種類で、納得した。

家に帰り、早速吸入の用意をする。

「A、コレ。」

いつもは割とすんなりしてくれる吸入も、今日は具合が悪いからか中々始めようとしない。

「これ終わったら、学校もどる？」

なるほど。

眼を潤ませて聞いてくるAに、俺は納得した。

まだ家にいて欲しいのか。

もちろん、そういう訳にもいかないのが心苦しいところだけど。

「ごめんな、戻らないといけない。
でも、昼休みは戻ってくるから。約束。」

Aだって頭では分かっているけど、寂しい物は寂しいし、心細いものは心細いんだろう。

すごく悲しそうな顔で吸入を始めたから、心が痛んだ。