駆け抜けろ ars 2 (ページ10)

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侵入 2 ページ10

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相葉は最初、丁寧に頭を下げ、爽やかに…、怖ろしく爽やかに、イケメン笑顔を張り付けて、何かを訊いてるふうだった。

ところが、その女性が、恥ずかしそうに顔を横に向けた瞬間、彼女の口元にすかさずタオルのようなものを当てた。

そうして見る間にくたりと崩れ落ちる女性を、当たり前のように抱えると、その次には相葉の姿はまた見えなくなった。

え！？

あいつ、中に侵入したんだ！

二宮は、全速力で、彼が消えた場所まで走った。

そこは裏口になっていて、少し引っこんだところに、白いドアがひとつ付いている。

その閉じられたドアが、かちゃんと音を立てた。

あ、鍵をかけやがった！

二宮は焦って、ドアをどんどんと叩いた。

「ちょっと、まーくんっ！閉めんなよっ！おいっ」

どんどん叩かれて、慌てたのか、諦めたのか。

ドアがすーっと開いた。

「うるせーんだよ。ほら、早く入れ！」

「もー、俺、仲間だろ？ひでえなぁ…」

文句をいいつつ、中に入ると、そこは広い庭になっていて、葉の落ちた木々が立ち並び、常緑の植木が、こんもりと綺麗に丸く刈られて、いくつも続いている。

今日は婚約式とあって、皆そっちに出払っているのだろう。

ここにいる限りではあるけれど、二宮には、庭も屋敷内からも人の気配は感じられなかった。

ほっと息をついて、ふと相葉を見ると、その足元には、先ほどの女性が倒れている。

改めてそのことに驚き、二宮は声を上げた。

「まーくん、これ誰よ！？」

「しっ！声がでけぇよ、カズ」

「あ、ごめん…」

「大丈夫だよ。この人には、眠ってもらっただけだから…」

答える相葉は、何かスマホと機械を繋いでいる。

「何をしてるの？」

「うん？まぁ、ね。顔を見られたからね…」

機械にそれほど疎くない二宮は、その言葉にピンときた。

相葉は、データをコピーしてるのだ。

万が一のために、この女性の個人情報を得ておいて、役立てる気に違いない。

少し怖くなって、二宮は彼に訊いてみた。

「…脅かすの？」

「…さぁ、それはこの人がどれだけ俺の顔を覚えているかによるけどね…」

「マジか…」

「生半可な気持ちで、泥棒は出来ないんだよ……、これでよし」

そう。

生半可な気持ちで、こんな仕事、できやしない。

だけど、大野を守っていくためには、相葉にはこれしか選択肢が無かったのだ。

大野と二人、泥棒稼業を生業にして生きていく。

それしか…。

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