駆け抜けろ ars 2 (ページ7)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:47,456 hit

小さな再会 1 （12/26）ページ7

.
松本と別れると、櫻井はパーティー会場に戻ろうと、
真っ直ぐエレベーターホールに向かった。

やはり松本の相棒は、２２３号を追いかけているらしいと知って、
ちょっと厄介なことになったな、と思う。

上階から下りてきた箱が、ポォンという音と共に停止し、
ボタンの下向きの矢印が上向きに変った。

扉がスーッと開き、そこから降りてきたのは櫻井には見覚えのある男だった。

先ほど会場で、一緒にビールを飲んだ男。

小柄だけれど、整った顔をした、イケメン。

大野である。

力を使いすぎて、へばっていた大野だったが、
一人で東山家に向かった相葉を、いつまでも放っておくわけにはいかない。

まだ本調子ではなかったが、Aにはひと言告げて、会場を出てきたのだった。

それに、相葉からのメールには、やっかいな子犬を一匹拾った、とあって。

相葉はお人よしだし、すぐに無茶をするから、大野は心配なのだ。

引き際は潔さも肝心。

続行は危険と判断した場合、ミッションをあきらめねばならない。

それを決定するのは自分の仕事だから、早く相葉の元へ行かなければ。

大野は気ばかり急いていた。

エレベーターから降りてきた大野を見つけた櫻井は、

「あのー、すみません！もしかして…」

慌てて手を伸ばして呼び止めた。

「はい？」

俯いていた青白い顔が、こちらを向く。

「あぁ！」

櫻井の存在を認めると、大野はちょっと目を丸くして、それからにこっと破顔した。

「あなた…一緒にビールを飲んだ、主任さん？」

立ち止まり、小さく人差し指を立てる。

「えっ？」

「ふふふ。迎えに来た男性が、確か、そう言ってましたよね？」

「…ははは。そうでしたっけ？」

櫻井は大野に近づくと、快活に笑った。

「そうですよ」

綺麗な頬笑みを貼りつけ、大野が頷く。

その笑顔に、櫻井の心臓が小さく跳ねた。

本当にこの男は、男性なのに、どこか色っぽい。

そんな趣味の全くない部下の菊池も、可愛らしい人ですね、なんて言っていたっけ。

それにしても。

それにしても、何だか具合が悪そうだ。

美しい微笑から目が離せないまま、櫻井は尋ねた。

「お帰りですか？顔色が優れませんね…。お加減でも？」

「あ、いえ、人に酔ったみたいです。大勢人がいるところは苦手で」

「なるほど…」

「車で来てるんで。帰ります」

大野は親指を立てて、駐車場の方を指した。

.