ツキ 1 （11/20更新） ページ18
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ううう、、と唸り声がこっちにまで聞こえてきて、今にも犬たちは大声で吠えそうだ。
もしも吠えられたら、忍び込んでる自分たちのことがばれてしまう！と、二宮が頭に手をやった時。
信じられない光景が、その目に映った。
三匹は急にくうううんと甘えたような声を上げて、その場に座り込んだのだ。
フェンスの傍には相葉がいて、犬の目線に合わせるようにしてしゃがみ、柵の間から手を差し込んで、犬の顎を触っている。
一体、どういうことなんだろう？
二宮が不思議に思いながら様子を見ていたら、
相葉はフェンスに足を掛け、やすやすとそれを越えると、向こう側に静かに下りた。
歩いていく相葉の後ろを犬たちが従順についていく。
驚いて見入っているうちに、相葉の姿はふっと見えなくなった。
あ！と立ち上がった二宮だったけれど。
相葉に、ここを動くなと言われたことを思い出し、また腰を下ろした。
分からないけど。
気になるけど。
今、自分があそこへ近づいたら、きっとよくない。
犬たちが騒ぐかもしれないし。
追いたい欲求をぐっと堪えて、二宮は唇を噛んだ。
一方相葉は、ド―ベルマンに吠えられる前に彼らに近づき、話しかけた。
心の中で。
自分たちは敵じゃないこと。
ほんのしばらくだけ、テリトリーに入れて欲しいこと。
大切な探し物があって、それは自分のものだということ。
相葉の持つ特殊な能力は、主に動物相手に通用するもので。
人間には、幼い子供にしか効かなかった。
それは、子供の心が純粋で、汚れていないからなのだが。
そんな限定的なテレパシーであったが、意外と役に立つことが多かった。
動物は秘密を洩らさない。
だから、能力がばれることもなく、隠密にことを進めることができた。
冬枯れした芝はきれいに刈られていて、ところどころ、犬たちが掘ったのだろう、土がむき出しになっている。
建物に付随して広いウッドデッキが設置してあり、洒落たガーデンファニチャーが置いてあった。
テラスから建物に入るドアがひとつ、あるにはあるが、こんな寒い時期、呑気にこんな場所でティータイムなんてなさそうだ。
つまり、鍵がかかっているのは必至。
それに、無理にこじ開ければ、警備会社に一発でばれてしまう。
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作者名：もここ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/mokoko_pl_f/
作成日時：2014年11月6日 14時
