ゲーム ページ2
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だけど、ヘタな同情は禁物だ。
まぁ、このまま仲間になったフリをして、どこかでこの男の尻尾を捕まえてやる。
二宮はその瞬間を想像してほくそ笑んだ。
そう。これはゲームなんだ。
自分が勝つか。
こいつ。２２３号が勝つか。
スリルある展開の方が楽しめるじゃないか、と前を行く相葉の背中を見ながら、二宮は思った。
地下鉄から私鉄に乗り換えるため、コンコースを通り、二人は無言で歩いた。
ジャケットの裾を掴んでついてくる二宮が気になって、相葉が時々振り向くと、その度に、にまっと微笑み返される。
その憎めない笑顔に、つい自分も笑顔が零れそうになり、相葉は慌てて前を向いた。
まだまだラッシュの時間には早い。
乗り換えた電車は、ぱらぱらと空いている席もあった。
「カズ。座ったら？」
「…いい」
「じゃあ、俺が座るよ」
端の席に腰掛けた相葉は、スマホを確認し始めた。
時々手を止めて、斜めに顔を上げ、何か考えを巡らせているのだろう、難しい顔をして鼻を擦ったりしている。
二宮は、座る相葉の前に立ち、電車の揺れに乗じて、自分の膝を相葉のそれにそっと触れさせようとした。
相葉の声が聞こえるかもしれないと思って。
「カズ」
「うん？」
「俺に触るな」
「あ、…ごめん」
もしかして、自分に心の声が届いていること、この男は気づいているのか。
じゃあ、さっき声が聞こえなかったのは、コントロールしてるってことなのか？
少しの驚きと共に、窺うように相葉を見下ろすと、ゆっくりと顔が上がり、射るような黒い瞳が二宮を見た。
「カズくん。俺に触っちゃだめだよ？分かった？」
口調は優しいけれど、その目の奥は冷えていて、二宮は背筋がぞくりと震えそうになった。
二宮という男は、すっと人の懐に入り、相手に自分を信用させると、その心を操るかのように翻弄してしまうのが常なのだが。
そんな、まるでマジシャンのような二宮でも、相葉はどこか掴みどころのない人間と思えた。
悪人ではない。
自分の勘を信じると、答えはそうなる。
だけど、何だろう、この、彼が纏っているものは。
半分は、影なんだ。
暗い影。
きっと、何か言えない過去を抱えているに違いない。
相葉から視線を外し、二宮は窓の外を見た。
そして、なぜこうもこの男が気になるのか、今まで経験したことのない感情にほんの少し戸惑い、その理由をぼんやりと考えた。
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作者名：もここ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/mokoko_pl_f/
作成日時：2014年11月6日 14時
