【狼ゲーム】嘘つきな総統様の弟【短編】 (ページ3)

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嵐の前のお茶会と決意ページ3

ｺｳ「危なかった...」

彼はﾄｲﾚの洗面所で顔を洗っていた新村ｺｳは、今この場には自分しかいないことを確認し、頭を抱えた。
「(もう少しあそこにいたら、表情が崩れた上に、ｱｲﾂを甘やかすところだった!!)くっ!」

先程のことを思い出し始める。ﾆｺﾆｺと花が咲き乱れそうなほど上機嫌に紅茶を楽しむAに、彼の理性は危うく溶けそうになっていた。
「(お茶請けの菓子を頬張り、口許に付いてる食べかすをとってやりたい。あわよくば、Aと二人きりでいたかった!紅茶くらい俺にだって淹れられる...くそ、喜ばせられる森ﾐｻｷが恨めしい...!)」

ｶﾞﾝｯと、拳を洗面台に叩きつけながら新村ｺｳは理不尽な怒りを抱いていた。
王馬Aが自分の想い人ということは誰にも知られてはいけない。
それはわかっている。しかし長年探し続け想い焦がれたこの想いはすっかり拗らせ、ｺｳ自身中々制御できないでいた。

拳を震わせていたのは抱き締めたい気持ちを抑えるため
ﾄｲﾚに来たのは少しでもこの昂りを発散させるため(もちろん誰もいないか細心の注意をはらって)

本来の彼なら今頃狼に細心の警戒をしているのだが、愛しの人がお茶会をすると聞きじっとしていることは彼にはどうしてもできなかった。
休憩前に狼を探しても見つけられなかったせいで、全員を警戒しなければいけないこの状況。
万が一森ﾐｻｷや小宮ﾁｴが狼だったらと思うと...いや、何よりも

「(あんな...あんな愛らしいｱｲﾂの笑顔を!他の男共に見せられるか!!!)」ﾊﾞﾝｯ

単純に独占欲が勝ったというのが大きかった。
ﾐｻｷ、ﾁｴ、そしてお茶に夢中だったAは気づかなかったが、お茶会中に部屋に入ろうとした男性は何人かいたのだ。
しかし、周囲を過敏なまでに警戒していたｺｳは、入る前にその気配に気付き、視線だけで殺害できそうなその怒気により全員追い払っていた。

後に、その顔は正に般若だったと、警官と某国語教師とﾍｯﾄﾞﾌｫﾝ青年は語った。
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ひとまず顔を洗い、なんとか頭を冷やしたｺｳは、ふとAのことを考える。
再会した彼女は自分に気づいていない。むしろ覚えているかも怪しい。
しかし、そんなことは些細なことだ。
自分にとって大事なのは、幼い頃に誓ったあの約束だけ。

『もしまた会えたら、今度はこーくんが僕を...』

ｺｳ「...必ず、守ってやる」

鏡に映るｺｳの目には強い決意が宿っていた。

彼女を守るためなら何でもする。
例え、誰を犠牲にしても...