beLoved (ページ8)

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玄関から物音がして目が覚める

静かに入ってきた影は真っ暗でも景瑚だとすぐにわかった

「A」

『...景瑚』

「遅くなってごめんね」

『ごめん』

ギュッと抱きしめる彼からは愛おしい匂いがする

安心と申し訳なさで感情はぐちゃぐちゃで、一度止まったはずの涙がまた止まらなくなった

「なんで謝るの」

『ごめん』

「なんのごめん？」

『疲れてるのに』

「Aのおかげで元気になったよ」

『無理言ってごめんね』

「俺は言ってくれて嬉しかったけどな」

そう言って頭を撫でてくれるから余計に涙が止まらない

人気アイドルである彼は多忙だ

寝る間も惜しんで練習して、ステージ上では誰よりも輝いている彼を見るのが好きだった

そんな彼の時間は私だけのものでは無い

ファンの子みんなのためにあるとわかっている

東京から名古屋まで約2時間

気にしなくていいと彼は言うが、その優しさが申し訳なかった

「俺、Aの彼氏だよ」

『うん』

「もっと頼ってくれないと彼氏って言えなくなっちゃう」

『景瑚忙しいでしょ』

「A以上に大切なものなんてないよ」

少し体を離すとティッシュで涙を拭いてくれた

『ごめん』

「ごめんじゃなくてありがとうがいい」

『...ありがとう』

「いいえ」

"お風呂一緒に入ろ"と言うと湯船を沸かしてくれたり、服を出してくれたりと部屋を駆け回り出した

そのうち追焚きが終わったことを告げるアラームが鳴ると、お姫様抱っこで抱き上げられる

『自分で歩けるよ』

「俺がやりたいだけだから」

そう言って服を脱ぐのも髪を洗うのも全部やってくれた

毎日のようにテレビで見ると言っても実際に会うのは数ヶ月ぶりで、気恥しさが拭えない

でも、この恥ずかしさもまた愛おしく感じた

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