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完璧彼氏 K.Ren ページ3

ｰYou sideｰ

重低音の響く会場に割れんばかりの歓声

その矛先はステージ上で輝く愛しい人に向けられていた

重力すら感じさせない彼の踊りは他を圧倒するほど異彩を放っている

そんな彼を私はスタンド席から見守っていた

『お疲れ様』

「ありがとう！」

"見に来てくれるん久しぶりやけん張り切っちゃった"と言ってステージ上とは別人の笑顔を私に見せる

ライブ直後の熱気は部屋の室温まで上げていて、11月にしては蒸し暑かった

汗を拭う彼を見ていると決心が揺らぐ気がして思わず下を向く

小さく伸びた影はまるで今の自分を表しているかのようで少し笑えてきた

そんな私を不審に思ったのか"どうしたん？"と蓮に顔を覗き込まれる

今しかない

意を決して彼と視線を合わせ、一言告げた

『別れよう』

「...なんで？」

晴れ舞台の日にこんなことを言う私は彼女失格だ

"俺のこと嫌いになったん？"と聞く彼は心底傷ついている様子で見ていられずにまた目を逸らした

『違うよ』

「じゃあなんでなん？理由がないと納得出来ないけん」

『私のせいなの』

言う予定のなかった本音が零れる

『私には、蓮が眩しすぎる』

アイドルである彼はグループ内でダンスリーダーを務める程の実力の持ち主だ

歌も上手くて頭も良く、努力も怠らない

おまけに料理もできるのだ

メンバーを率いるカリスマ性を持つ彼に対して私は平凡な派遣会社員

取り柄もなければ人を惹きつける魅力もない

こんな私が彼の隣にいていいのか

私に蓮は勿体なさすぎる

そう思うと彼を見ているのが辛くて

好きだった彼のステージも次第に見なくなっていた

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