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雨の中、私たち二人の足音だけが聞こえる。
雨だからか園内には誰もいなくて雨音が落ちる音だけが二人を包む。
時々傘同士がぶつかって大きな雫が落ちてお互いに小さな声で謝罪する。
傘がぶつかるほんの少し手前で固定された距離感が何故だか心地いい。
「……え……いか？」
「…え？」
雨音にかき消されてトントンさんの声が聞き取りづらくなり私はさしている傘を少し斜めに倒し彼のそばによる。
「冷えないかって！」
「あ、大丈夫です！」
聞こえやすいように少し大きくなった彼の声量に反射的に私も大きく返してしまうと彼は「ちゃんと聞こえとるわ」と微笑む。
不覚。超絶素敵な笑顔。
倒した傘からボタボタと零れた水滴で少し裾が濡れたのも気にならないくらいにはやられた。
ふと、逸らした視線に飛び込んできた紅い花に足を止める。
それに気付いたトントンさんも私に並んで足を止める。
「…椿か」
その花を見た彼はそう呟く。
時期が時期なのでいくつかの花は地面に落ち雨粒をかぶっている。
文字通り、ぼとり、と落ちたのだろうそれを一つ拾い上げる。
縁起が悪いと言われる花。
言われることは多々あるが萼とおしべだけを残し丸々落ちるそれは処女性を失うという意味合いで使われることもあるという。
私にぴったりだなと自嘲する。
「この花はお前によう似合うな」
私の考えと合致するように放たれた言葉に勢いよく振り向く。
落ちた花を拾う私とは裏腹にまだ萼にしっかりとくっついて咲き誇っているそれを軽く掬って愛おしそうに見つめる彼に、その視線を向けているのは花なのに羨ましいと思ってしまう。
「…あ、悪い意味やないで？花言葉がAさんを現してる思ってな」
「…花言葉、ですか」
花言葉…。帰ったら調べてみようかしら。
ほんの少し前まで嫌な花だと思ったのに彼の一言だけで素敵な花なのかもと思ってしまうのは厚かましいだろうか。
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miu(プロフ) - 有馬さん» 返信ありがとうございます。悠亜さんですね、読みに行かさせていただきます...！！ (2020年6月1日 16時) (
レス) id: 4e1434e32c (このIDを非表示/違反報告)
有馬(プロフ) - miuさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！ｲﾗｽﾄは悠亜さんに書いていただきました。素敵な作品を書いてらっしゃいますのでもし読んでないならば是非読んでみてくださいね！ (2020年6月1日 16時) (レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
miu(プロフ) - 何から何まで好きすぎるし、イラストのtnさんかっこよすぎるし最高じゃないですか..これからも頑張ってください！！. (2020年6月1日 16時) (レス) id: 4e1434e32c (このIDを非表示/違反報告)
有馬(プロフ) - 未来さん» コメントありがとうございます。完結に向けて頑張りますので最後までお付き合いよろしくお願いします！！ (2020年6月1日 1時) (レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
有馬(プロフ) - 青さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです、励みになります；；本当にありがとうございます！！ (2020年6月1日 1時) (レス) id: adf3e71480 (このIDを非表示/違反報告)
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