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もう少しも力が入らなかった。抵抗する気も起きないくらい疲弊し切っていて、吐かずに済んだのは多分、降谷がいてくれたからだろう。
私を抱き締めたまま、眠りに入ってしまった降谷の腕が緩むことはなかった。私も一度眠りに落ちたものの、真夜中にまた目が覚め、暫く降谷の寝顔を見ていた。
どうにもならないとしても、言うべきだった。降谷が怒るのも当然。無理やりにでも分からせようとした、ちゃんとそれは分かってる。責める気なんて少しもない。
傷が治りきらない内に触れられることはよくあるし、それはここまでの嫌悪感はない。ただ、痕になってしまうと相手が降谷であっても怖くて仕方なくなる。何度も解決策を考えた、でも何も見つからなかった。
「……謝るのは、私の方だ……」
確かに、ごめん、と聞こえた。とても小さい声だったけれど。降谷は悪くないのに。
私を含め同期6人の中でも降谷は童顔で寝顔となると余計に幼い。仮眠室で寝ている時より気が抜けている。若く見られるだろうな、20代前半と言っても全く怪しまれないと思う。
整った綺麗な顔立ち。初めて会った時から随分綺麗な顔をした人だと思ってはいたが中身があまりに乱暴なんでそれも忘れかけていた。昔に比べると笑った顔を見るのは少なくなったような気がする
「…寂しいんだぞ、馬鹿」
顔に手を伸ばした時、携帯が鳴り響く、机の上だ、誰?
「もしもし…?」
《仕事中か?お疲れ》
「松田か……違うよ、」
《仕事じゃねえのに起きてんのか、3時だぞ》
「人のこと言える…?ちょっと色々あって……一回寝たんだけど、目が覚めて…」
《…また無理したんだろ》
「何で、」
《声がそんな声してっからだよ》
「……エスパーかよ…っ」
《……疲れた時はちゃんと休め、お前はだいぶ頑張りすぎだから》
「っあーあ、陣平のばーか……っ折角引っ込んだのに…」
《ははっ、泣き虫》
「うっせー…っ」
《じゃあな、早く寝ろよ》
「…分かったよ、」
結局、何の用事なのかも告げぬまま切られた電話。何で分かるのか不思議で仕方ない。言わなくても、会わなくても、分かるのかな、松田は。
頑張りすぎ、無理するな
人を頼るのが下手くそな私がいつも言われる言葉、なかなか上手くはなっていないらしい
「…降谷だって、下手くそなくせに…」
頬に触れたら、背中に回された腕の力が強くなった。ああ、もう、どうやっても逃がしてくれないんだろ、今日くらい眠ってしまおう、この暖かな腕の中で
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時