【名探偵コナン】落としたそれが在る世界【降谷零】 (ページ43)

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・降谷視点

「Aが、単独警護…？」

局長に聞かされた内容に言葉を失った。有り得ない、男だって1人では決して行わない仕事を女でしかもAにやらせた？

「今回は事情が事情なんだ。相手が男は信用出来ないと言ってる。脅迫されているわけでもないし、危険はないと判断した」

「しかし…！」

「今日のパーティーで終わるはずだ。今のところ問題はないと報告が来てる。」

ここ数日、Aがいない理由を聞いてはいなかったが、危険な案件は持っていないはずだし調査に出ることもある為そこまでの心配はしていなかったが、もっと早く聞くべきだった。

脅迫されていないと言ったって警護を依頼してくるというのは可能性を捨てきれないからだろう。あいつは迷わず盾になる、局長もそれは分かっているはずだ。敢えてだなんて、考えたくはないが

「降谷…」

「…単独警護なんて、有り得ない」

「何も言ってなかったよな…」

「口止めしたのは局長だ、そりゃ言うはずないさ」

幸い、依頼者の宿泊するホテルを局長から聞くことが出来た為、パーティーの終了予定に合わせホテルの傍に車を停め出てくるのを待った。依頼者を連れて入る際は正面を使うかもしれないが、警護が終わればAは裏から出てくるだろう。

もう間違いなくホテルに戻っている時間だ、遅い、何かあったのか？そう思った矢先、正面玄関から飛び出してくるドレスの女性を視界の端に認めた

Aか…？

どこに向かうつもりか走り続けるAを追い、車を走らせる。急に立ち止まったと思ったら崩れ落ちてそのまま動かない

「A！」

車を飛び出して駆け寄るとAは震えていた、大粒の涙を零しながら自分の腕で身体を抱くようにして泣いていた、声も上げず

「どうした…？」

その肩に触れようとした俺の手を振り払ったAは酷く怯えた目をしていて、次から次へと溢れる涙が着ているブルーのドレスを濡らしていく

「あ……」

「A…」

「ご、め…っわ、たし……」

俺の顔を見て、その顔は悲しみに歪む。こんな姿は一度も見たことがない。理由が分からない、でも震えている、泣いている、Aが目の前で、

「…もう、大丈夫だから」

少し力を込めたら壊れてしまいそうだった、抱き締めた腕の中で身体を上下させ嗚咽を漏らすAの涙は収まる気配がない。

零、と何度も小さく、助けを乞うように呼んだ。

息苦しそうに泣くAが消えないように抱き締めるしか出来なかった。