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※多少百合を匂わす描写がありますのでご注意下さい。
結局その日も特に問題は起こらず終了。四日間続いた警護はこのパーティーが最後だった。
「本当にありがとう、貴女のお陰で安心して過ごせたわ」
「身に余るお言葉です」
ホテルの部屋に皆瀬さんを送り届け、特に不審な人物は現れなかったことや、その他諸々の報告を済ませ警護の終了を伝えようとした時だった、
「ねえ、Aさん」
「はい、何でしょうか?」
「気になっていたんだけれど…」
そこで私は言葉を発せなくなる、剥き出しになった背中や肩、正しくは傷痕に彼女の手が触れたから。
「大きな傷ね…仕事で、かしら」
「……っやめて、いただけ…ますか…」
「あらどうして?女に肌を触れられるのは嫌い?」
違う、そうじゃない、女だとか男だとかそんなことはどうだっていい。必要なら触らせる、私が触れられたくないのは傷だ
「……白い肌によく映えて、綺麗よ」
「っ…!」
「貴女…スーツの時はとても凛々しいけれど、そうやって着飾ると、美しいわ、本当に…この傷も…芸術みたい…普段は隠しているの?傷もその色香も全て」
おかしい、こんな傷を綺麗だなんて。逃げ出したい、叫びたい、でも身体が動かない。傷痕から伝わる感触が気持ち悪い、吐きそうだ。
「私がどうして貴女にそのドレスを着せたか、分かる?見たかったのよ、その首元の傷が一体どこまで続いているのか…」
首元から背中に這う指、このままでは自分が壊れてしまう。声を絞り出してその手を掴んだ。
「……っ警護は終了させて頂きます…ドレスは後日、お返し致しますので…失礼します」
「…返さなくていいわ、貴女の為に買ったんだもの」
その言葉には何も答えず、ドアを閉め走った。もう感情がめちゃくちゃで思考がまともに働かない。今までだって、必要ならしてきたこと、けれどあんな風に傷に触れられたのは初めてで、感覚が消えない、嫌だ、駄目だ、消えろ
『この傷も…芸術みたい』
何が芸術だ、こんな傷。痛みがないのなら全ての感覚を奪ってくれれば良かったのに。そうすれば触れられたってこんなに心が乱されることもない
立ち止まったら涙が止まらなくなった、何から来る涙なのかすら分からない。
助けて、誰に言うでもなく呟いたそれは喧騒に消えていった。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時