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・緑川視点
ほぼ全員が重傷、命を落とした捜査員も大勢いた。警察病院の混乱が続く中、目を覚ました俺は車椅子を漕ぎ目的の場所まで急いだ。走れないのがもどかしい。
ICUの前の椅子に松田と萩原が座っていた。顔には細かな傷と大きなガーゼ。腕に包帯も巻かれている。
「…緑川…目、覚めたのか…」
「…お前ら、ずっとここに…?」
「当たり前だろ…あいつはまだ、」
やつれたようにも見える2人を見て、甦る、あの現場で見た光景。血溜まりに倒れ込んだAの姿。
ゼロと伊達の乗った車が俺と同様に現場に向かっていたのは確認した。伊達とはまだ会えていない、ただ看護師の話では命に別状はないとのこと。ゼロは、あの時Aのすぐ傍にいたのが見えた。多分、Aを除けば俺たちの中で一番酷い傷を負っているのはゼロだろう、ここにいないことでも容易に想像がつく。
「……最後の爆破直前だったからさ…俺たちは…こんなもんで済んだけど…」
言い淀んだ萩原が頭を抱える
「手術は…一応は終わった、何の気休めにもならねえけどな、いつ急変するか分からねえだとよ…ふざけんな…」
どこにもぶつけようのない怒り、松田の顔にはそんな感情が滲んでいた。
無線からAの声が聞こえた時、正直胸が騒いだ。嫌な予感がした、それは俺だけではないはずだ。けれど、俺の想像を遥かに超えた地獄がそこには広がっていて、血に染め上げられたシャツを纏い、見たこともない目をしたAはまるで知らない人間のようだった。
『ずっとこれで生きてるんだ、そんなに大したことじゃない、心配しすぎだよ』
あいつが痛みを持たないと知った時、俺たちは止めるべきだったんじゃないか、警察官になること自体を、こうなってしまうのならば。殴られたかもしれない、恨まれたかもしれない、でも、Aの命に代わるものなんて何もない。
祈るようにICUを見つめた。
壊滅状態の爆破現場で、犯人を捕えられたのは間違いなくAがいたからだ。あそこで捕縛しなければ確実に民間人にまで被害がいった。だけど、
お前がそれを正義だと、言ったって
あれしか方法がなかったのだと言われたって
お前が死んでしまうならそんな正義
俺はいらない。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時