＃６０ ＄剛典 ページ10
俺が昔買ってあげた
ラジコン。
埃に埋もれるわけでもなく、
ピカピカってわけでもない。
俺の買ってあげたそれをAはまだ持っていた。
若干上の空で皆と話す俺。
全然酒が進まない。
向こう側には、
健二郎さんと仲良く話すA。
沸々と湧きだす思いが止められなさそうで、
トイレへと逃げる。
岩「はぁ・・・・・」
自然と出る溜め息。
もう、俺は自覚している。
未だに、Aが好きだと。
自分から振っといてまだ好きなんて・・・
馬鹿かよ俺。
頭では、分かっていた。
“アレ”は本当の恋じゃないって。
一時的な心の揺らぎだって・・・・
それでも、あの頃の俺はまだ子供だったから・・・
どうしても忘れられない、別れを告げた時のA。
鮮明に思い出せるあの表情と、
冬景色。
目から、知らず知らずのうちに涙が溢れてく。
やば・・・・・
戻れなくなっちゃった(苦笑)
“コンコン”
トイレのドアがノックされた。
岩「はーい・・・」
「あっ、剛典？大丈夫？」
岩「ん・・・大丈夫。」
「・・・何で泣いてるの？」
岩「え・・・？」
「だから、何で・・・」
岩「・・・分かんない。」
「そ・・・でもトイレはあれだから場所移動して？」
岩「・・・うん。」
トイレのドアを開ければ、目の前にA。
困った顔をして、しばらく俺の事を見つめたAは、
どこかの部屋へと俺を案内した。
「ココ・・・何にもないけど。」
岩「ん・・・ありがと。」
Aが部屋から出て行った。
まあまあ広い部屋の床に
仰向けで寝そべる。
今さらだけどさ・・・
良い所住んでんな、アイツ。
でっけぇ奴になっちッた・・・・
岩「止まんね・・・・」
溢れる涙は、
Aへの思い。
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作者名：PIG BONE | 作成日時：2015年11月14日 11時
