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<09> side F ページ9

「疲れたでしょ?
 ソファに横になろ?」


ソファに移動し、自分が下になる形で
抱きしめたまま横になった。


のしかかる彼の重さが心地よかった。





「結局また…こんなことさせた…
 今までどおりって…言ったのに…」


不意に放たれた彼の言葉に動揺し、
腕の力を少し緩めた。


「でも…俺はやっぱりうれしいよ。

 それにみっくんだって…
 本当は望んでるんじゃないかって言葉、
 あの時、否定しなかったよね…?」


彼の身体がピクリと反応した。


俺の腕からすり抜け身体を起こすと、
一点を見つめて黙りこんでしまった。


そして、ポツリと呟いた。





「代わりなんていらない…」





「…ぇ」


聞き間違いかと思い、俺も身体を起こした。





「ごめん、太輔…

 俺、本当は代わりなんて必要ない。

 誰にも…明恵の代わりなんて…

 してほしくない…」





その言葉が…重く…暗く…
俺の心に鳴り響いた。





「みっく…


「なのに…俺はおまえにこんなことさせた…
 おまえの好意を利用したんだ。
 自分の私利私欲のために…それも2回も。
 最低だよ、俺は…」


そう言いながら、俯いて顔に手をあてる。


彼の震えた声が部屋に響いた。





「じゃあ…

 じゃあ…俺の私利私欲のためなら…
 受け入れてくれる…?」


「…ぇ?」


顔を上げた彼の目は充血していた。





「何回も言ったよね?
 俺がやりたくてやってるんだって。

 俺、みっくんがいないと生きてけないの。
 触れなきゃ、気がおかしくなりそう。
 ほっといたら何しでかすかわかんないよ。
 それでもいいの?

 俺がこの世からいなくなっても…いい?」


「太輔…!?」


「…そう言って、
 みっくんは俺に無理やり脅されたの。
 だから、仕方なく俺に付き合わされるの。

 これからも…何回だって…

 俺に悪いと思ってるなら、
 その罪悪感背負って俺に付き合って?

 みっくんがなんて言っても、
 俺、ココを出ていかないから。」





狂ってる。バカみたいだ。


そう思っても、
自分の言葉を止められなかった。


兄弟でいられればいいと思っていたけど、
俺がそれに耐えられなかった。


だから、
やはり姉の代わりでいれば必要とされると
思ったのに、今度はそれも拒否された。


もう手立てがないんだ。


あなたが俺の好意を利用したなら、
俺もあなたの優しさを最大限に利用してやる。


仕方ないでしょ?


だって俺は、汚い人間なんだから。







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みっか(プロフ) - はるかなたさん» いつもこんな駄文を褒めてくださって恐縮です(。>д<)本当にありがとうございます!!あたたかいお言葉にお応えするためにも、できるかぎりのスピードアップは図っていきますo(`^´*)これからもどうぞよろしくお願いいたします♪ (2016年5月27日 12時) (レス) id: 8370f2c93c (このIDを非表示/違反報告)
みっか(プロフ) - はるかなたさん» 現時点でのふたりには絶望しかないはずなのに、どこか明るくなったように感じられるのはやはりお互いを想う気持ちだけは間違いないことがわかったからかもしれませんね。これからもう少しみっくんの想いを明らかにしていこうかと思っています。 (2016年5月27日 12時) (レス) id: 8370f2c93c (このIDを非表示/違反報告)
みっか(プロフ) - はるかなたさん» いつもコメントありがとうございます♪言ってくださってる表現、ものすごくわかります!自分の作品のくせに人様からのお言葉に激しく共感するところがまだまだ未熟な証ですが(^^;でもこの話のタイトルどおり、そういうほの暗さを表現したいと思っているのは確かです!→ (2016年5月27日 12時) (レス) id: 8370f2c93c (このIDを非表示/違反報告)
はるかなた(プロフ) - 意味ではありませんので!そういうのではないので!今回の更新の件ですが、すごくすごく美しい文章でした!!←偉そうにすみません!でもほんとに!今までで一番好きな回かもです。みっかさん、マイペースですよー。ぼちぼち行きましょー(*^^*) (2016年5月26日 22時) (レス) id: fb50bd66c9 (このIDを非表示/違反報告)
はるかなた(プロフ) - 視界がはっきりするかと思ってたけど、やっぱりほんのり薄暗い。けど、私には、泣きつかれたみっくんと太ちゃんを目の当たりにしても、どこか前よりも明るくなった気がするんです!もちろんそれは、私の勝手な解釈です!なので、ハッピーエンドにしてください、って (2016年5月26日 22時) (レス) id: fb50bd66c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みっか | 作成日時:2015年12月26日 13時

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