86 ページ36
ーーーAーーー
「俺が悪かった。だから、何も言わなくていい。」
楓士雄の肩が、沈んでる。
でも、もういつもの優しい目に変わっていた。
きっと、七海さんから全部聞いたんだろうな。
そうだとしたら、ちゃんと言いたい。
自分の口から。
『聞いて。』
「だからいいって。」
帰ろうと、テーブルに手をつく楓士雄。
嘘ついたままなんて、嫌。
楓士雄、なんか自己解決してるっぽいし、
私だって、スッキリして明日を迎えたい。
『いいから聞けっつってんの！』
「う゛」
私は楓士雄の頬をぐっと片手で潰し、こっちを向かせた。
『ザーッと言うから黙って聞いてて。』
私の眼圧に、楓士雄が固まったまま返事をした。
「ふぁい。」
よし、と楓士雄の頬を離す。
私はスーと息を吸って、全部吐き出した。
『マドカに呼び出された時に不良に絡まれて、そんとき助けてくれた奴が、何故か私に興味を持って。あ、眼鏡清邦姿の私ね。んで、知らない間に連絡先交換されてたから、電話ずっと無視してたの。』
バーっと話す。
は？お？ん？と遅れて理解する楓士雄。
「えーっと…ようするに、おさげ眼鏡のお前に惚れたってことか？そいつは。」
『ま、そういうこと、かな。うん。』
そして、楓士雄はまじかよ！？と口をひん曲げた。
おい、とまた楓士雄のほっぺをつねる。
「じゃ、あの時の電話…」
楓士雄があ、とつままれて赤くなった頬を押さえながら言った。
『そう。電話に出たら、住所だけ伝えてきて。もしかして正体がバレたんじゃって思って、行ったの。そしたらそいつ、熱でぶっ倒れてて。』
「なんだそれ。あのとき？」
『そう。だから助けられた義理もあるし、そのまま帰ったら鬼だから、看病した。そしたら私も寝ちゃったの。』
「へー…ふーん。」
楓士雄は納得するようで、でも、そのまま寝落ちしたってフレーズにひっかかるように眉を顰めた。
『寝ちゃったのは本当にバカだった。ごめん。』
「だな。気つけろアホ。」
楓士雄は目を細めて、腕を組んだ。
「そいつは結局、お前のこと清邦の子だと思ってるってこと？」
『そう。で、帰る時に不意打ちに…その…』
「キスされたってわけか。」
はぁー、と目を上に向け、呆れるように頭の後ろで手を組む楓士雄。
『おでこにね。』
そう言うと、なんだよ、と楓士雄は安堵するように、肩をすくめて大きく息を吐いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 441人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うみ(プロフ) - コメント失礼します！ いつも更新楽しみにしてます！ 読み進めてて一つ気になってるんですけど泰志が泰司になってしまってますよ(><) 訂正失礼しました！これからも頑張ってください(^^) (2022年9月15日 14時) (
レス) @page49 id: bd02d540e4 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - 素敵帽子君さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！鮫岡いいですよね！私も推しなので妄想膨らませてます(ノ_＜)イケメン多くて困っちゃいますよね笑 (2022年9月1日 23時) (レス) id: 791ef3706d (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - ねむさん» 全てよんで頂いてるなんて、本当にとっても嬉しいです！ありがとうございます！須嵜どう出そうか悩み中です(＞人＜;)公開したらまた観るので、観ながら考えますっ！ (2022年9月1日 23時) (レス) id: 791ef3706d (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子君(プロフ) - コメント失礼します。この作品とってもとっても面白くて、更新されるのをいつも楽しみにしています！個人的要望ですが、鮫島ともっと絡んで欲しいなぁと思ってます。もちろん、お話の流れもあると思うので、無理にとは言いません。これからも楽しみにしています (2022年8月30日 19時) (レス) id: aedff0a66b (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 初めまして。ななし様の作品は全て読ませて頂いております。HiGH&LOWの続編執筆して頂きとても嬉しいです。映画𝐗まで突入しましたら須嵜亮(中本悠太)も絡んで頂けたら幸いです。彼との絡みが無くとも更新楽しみに待っております。 (2022年8月30日 2時) (レス) id: 5618040869 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななし
| 作成日時：2022年8月9日 12時
