グラサンと眼鏡 中編ーHiGH&LOW THE WORST

グラサンと眼鏡35 ページ35

ーーーAーーー


へー。


花岡楓士雄…



なんか良いやつじゃん。



手を振っていると、パッとそれを止めれた。



手を掴みながら、ツンとした表情で私を見下ろす洋介。




『あ、えーと、…元気？』





「お前はバカか。」



そう言って手を離し、長い足でスタスタと歩き出す。




私を置いて行ってしまう洋介。



…急に来て、怒ってる？


…流石にそうか



何も言えず、立ってると、


5メートルくらい先で、洋介が立ち止まった。



ポケットに手をつっこんで、振り返る。


そして、無言のまま、"来いよ"って顎を前に振った。





なんだ。


やっぱ、洋介じゃん。



私は小走りで洋介の方まで行き、

そのまま、ちょんっと肩で洋介にぶつかった。




『ご飯食べた？』



「まだ。」



『食べいこっか。』



洋介は返事はしなかったけど、


ふっと口元を横に動かした。





『あのラーメン屋、まだつぶれてないよ？』




「…知ってる。」




『相変わらず、親は忙しいの？』


「まぁ。お前もだろ？」




私の親は共働きで、
本当に家にいないことが多いけど、

洋介はすこし違う。


お金持ちの大きな家だけど、

昔から、家に帰りたくないって感じだった。






塾の帰りによく行った、ラーメン屋の暖簾を潜る。





私達は特に会話することなく、

カウンターに横並びに座った。



横目でチラッとみたり、アイコンタクトしたり。


無理に会話しなくても、居心地がいい。




『なんだかんだで中華そばが一番なんだよねぇ〜』



私の独り言。

洋介は、チラッとこっちをみて、

また言ってるよ。って顔してから、麺をすすった。







『そーいえばさ、タイマンっていつなの？』



カタン、と洋介のレンゲが音を立てた。




「…お前が知ってどうすんだ。」



『みに行きたいなーって。』



洋介はチラッとこっちをみたけど、

その言葉を無視して麺をまたすする。



『どっち応援するかなぁー。あの楓士雄って人も応援したいけどねぇー…』



そういうと、洋介が面倒くさそうにこっちを向く。




「鳳仙鳳仙うるせーな。」



『え、一言も言ってなくない？』



「そーじゃなくて… ま、いーわ。」




洋介はそう言って、最後の麺をレンゲに集める。




『なーになに？てか、洋介は一人勝ちだったんだからいーじゃん。』




すると、洋介は丁寧に箸を置いてから、


一呼吸おいて、こっちを振り返る。






「…お前、なんで知ってんだ？」

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