Don’t bother me.2 (prince of legend)

84 ページ35

ーーーAーーー




「Aさんはさ、それでいいの？」




核心を突かれる。



私だって、そうは思わない。



付き合うならちゃんと好きになった人がいいし、



こんな風に決められたくない。



でも、



“他言無用ですよ？”



理事長の言葉が私の口を閉ざす。



「本当に、それでいいの？」



光輝くんの強い眼差しが刺さった。




『…うん。』






苦しくて、目を見て返答出来ない。





光輝くんはきっと、私を想ってくれている。



多分、今まで何度も好きになれるタイミングはあったと思う。




でも、私は…




“泣いてんじゃねーよ。”




あの時の情景が浮かんでいた。









「Aさん。」


ハッとして我に変える。



そうだった。


今光輝くんと2人だったんだっけ。



そして、隣を向いた瞬間、


視界がふっと暗くなった。




え…


ふわっと光輝くんの匂いに包まれる。



一瞬、何が起こったのかわからなかった。









唇に暖かい感触。





今、



私…








どんっと手を突っぱねて、その場から離れた。




「わっ！！」




光輝くんは勢いよく後ろに飛ばされ、ベンチから落ちそうになっていた。



私は口を押さえたまま、放心状態で光輝くんを見下ろす。




『な…なにして…』





「うわっ！ごめん、なんか、つい…」





ああ、


まじか。


まじかまじか。



ファーストキス…




相手をはっ倒して終了。




『ついって！！な、何考えてるのっ！！』



「ご、ごめんっ！！」




沸騰して蒸発するんじゃないかってくらい、顔が熱い。


光輝くんも、同じくらい真っ赤になっていた。


いやいや！


そっちが仕掛けてきたんでしょ！








「…でもこうでもしないと、」




光輝くんは、息を整え、ゆっくり立ち上がった。




「Aさんの気持ち、わからないから。」




『え…』






「でも、今のでわかった。」



『な、何…』






光輝は、あーあ。と言いながら、ぐーっと伸びをした。




「きっついなぁ。でも、選手権は本気だすから。」





そして、一歩私に近づき、人差し指を向けた。




「覚悟しといてね。」




そして、光輝くんは「じゃあね！」と自転車に乗って、公園を出ていった。





な、


なんだったんだ…



これって、ありなの？



私は全身の力が抜けたようにストンッとベンチに座り、落ち着くまで立てなかった。

85→←83

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す