3 ページ4
―――A―――
「あ、Aさん、あのさ、ここの問題なんだけど…」
授業が終わるとすぐ、毎回天堂くんは話しかけてくる。
周りの女子からの視線が日に日に増してくるのは、気のせいではない。
『あ、これは公式を代入すればすぐに解けますが…』
「おー！さっきの公式か。そっかそっか！」
天堂君はペンを振り、大袈裟にリアクションしている。
あーもう。なんなのよ。
私はすっと席を立ち、帰りの支度を始めた。
「いつも帰るの早いね。」
『バイトがあるので。』
平日は毎日バイト。
部活のある子は仲間と集まりだし教室がざわつき始めている。
『それじゃあ。』
「え？ああ、うん！また明日！」
私は逃げるように駐輪場へ向かった。
人気者と関わるのは、危険だ。
ましてやこの学園の王子選手権候補。
みんながこのどうでもいい祭で盛り上がってる間に、私は勉強して差をもっとつけてやる。
まぁ、そう思っても無視はできないし、これから一年どうやって乗り切ろうか、毎日考えていた。
「あーやばい、早く行かなきゃ。」
私は自転車を漕ぎながら、メガネをとって、髪をほどいた。
風が心地よく、髪をすり抜ける。
この瞬間が一番好き。
なんとも言えない開放感を感じながら、
下町を駆け巡る。
自転車で25分。電車賃は勿体無い。
私はいつもの登り坂に差し掛かり、立ち漕ぎを始めた。
その瞬間、
ガコッ！！！
「うわっ！！」
ペダルにガクンと抵抗がなくなり、私は空を漕いだ。
空回りしてこけそうになり、慌てて自転車を降りる。
最悪だ。
チェーンが外れてる…
「もうっ！！」
じんわり汗を感じながら、坂を登り切って一息ついた。
「遅刻しちゃう…」
すると、学ランを着た二人組の男の子に声をかけられた。
うーん、なんだかヤンチャな感じ。
金髪と坊主。でっかいピアスをし、学ランはダランとボタンをあけている。
「かーのじょ！」
「ブリリアント学園のお嬢様？」
ナンパ！？こんなときに…
てか、お嬢様がチャリ漕いでるわけないやろが！！
「こんなところに珍しいな。一緒に遊びにいかない？」
「おっ、めっちゃ可愛いじゃん！！俺らとカラオケ行こーぜ♪」
「おいおめー、お嬢様がカラオケなんて行くわけないだろ！？」
私の行く手を阻む馬鹿どもは、玄武高専生。
無視しようと歩きだしたら、
ぐいっと手首を腕を掴まれてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 621人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななし(プロフ) - ゆなさん» 嬉しいです！ありがとうございます！最後まで読んでいただけたら嬉しいです！ (2019年12月1日 16時) (
レス) id: 6a3e7ad6c9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな - 初めまして、とても素敵な小説ですね。読むのが楽しみです (2019年11月5日 19時) (レス) id: 3d72f20392 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - 秋和☆°・.。さん» ありがとうございます！！頑張って完結させますね(*^^*) (2019年8月2日 1時) (レス) id: f172c4d98f (このIDを非表示/違反報告)
秋和☆°・.。(プロフ) - 続編の公開待ってます！ (2019年7月21日 2時) (レス) id: fd8f2345ac (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - 雫さん» ご指摘ありがとうございます！直しますっ！ (2019年7月6日 19時) (レス) id: f172c4d98f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななし
| 作成日時：2019年6月27日 4時
