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「じゃ、ジャニーズ?」
「うん。」
「雄登、ジャニーズだったの?」
「え?姉ちゃん、同意書、書いてくれたでしょ?」
「どういしょ?」
「そう。入るときも、仕事のときにも何かと書類書いてくれてるじゃん。…もしかして、内容見てなかったの。」
見ていなかった。
「だって、どうせ学校からのお便りだと思ってたんだもの!!いちいち見るの面倒くさって思ってから、内容なんて見てない!雄登、いつも仕事の前に出してくるから、時間もなかったし…。」
溜息をついているが、弟よ、姉はまだ話についていけていないぞ。
「じゃあ説明するけど、俺去年の4月にジャニーズ入ったから。グループにも入って、軌道に乗ってると思う。」
「そ、そうなの?」
「そう。まあ、まだJrだし、デビューできる保証ないから、学校はやめないし大学も行くつもりではいるけど。」
「なんか仕組みがいまいちわからないんだけど…。」
「とにかく!もう、その夜の仕事はしなくていいんだよ!俺のために家を出て、俺のために苦しんでる姉ちゃんを、もう見たくないんだ。だから、お願いだから、もうその仕事はやめてくれよ…。」
「雄登…。」
思えば、思春期の弟にとって、明かしてはいなかったとはいえ、姉が体を売ったお金で生活するというのは中々に辛いものだったのではないだろうか。今まで必死過ぎて気付かなかったけれど。
それに、本当に雄登がこれからデビューするなんてことになったら、姉が風俗ですなんでスキャンダルもいいところだ。そんなことになる前に、どうせ血は繋がっていないのだし縁を切ってしまえばいいのかもしれないけれど、私には、きっとそんなことはできない。雄登と出会った時から、雄登の姉になったあの日から、私は、雄登を守らなければならないのだから。
……結局、私は我儘なんだなあ。
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作者名:渚 | 作成日時:2019年11月5日 0時