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閑話3 ページ12

姉と二人暮しを初めてから、特に夜の仕事を辞めてからは、毎日家に帰るのが楽しみだった。



でも、今日は、とてつもなく足が重い。


結論を言えば、帰りたくない。


姉を養うと決めた矢先の出来事に、しかも相手は自分の先輩という事実に、どうしても立ち直れない。


事務所来た時ってなんだよ、じゃあ俺は、Aとその相手のキューピットに遠からずなってしまったってことか?そんな事あるか?


ドアの前から1歩も動けず、余計なことばかり考えてしまう。


ああ、こんなに鍵が重いことはあったか?


こんなにドアが重いことはあったか?


だめだ、Aに『 彼氏だよ!』とか言われたら立ち直れそうにないし、補習かレッスン入ったって連絡しよう。それがいい。




そう思って、後ろを向いたその時だった。







「お!那須じゃん!今帰り?タイミングバッチリだな!」






恐らく、いや多分、99%の確率で、いやまだ分からないけれど、もしかしたらAの彼氏かもしれない人が、笑顔で手を挙げていた。
ああ本当に、なんてタイミングだよ。







「……樹くん、こんな所で何してるんですか。」

「え、Aから聞いてない?」




あ、もう、これ以上聞きたくない。

もう、ここから離れたい。

そんな俺の思いを、いつも周りの空気を読みまくっているはずなのに、何故か全く汲んでくれないこの人は、俺にトドメを刺した。






「おっかしーなあ……。Aに、今日弟に彼氏って紹介するから!って言われたんだけどさ、」








こんなに、Aに会いたくないと思ったのは初めてだった。

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作者名: | 作成日時:2019年11月5日 0時

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