結婚しない二人 (ページ9)

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｢初めまして！平野紫耀です。えっと、Aちゃん、よな？｣

｢はい。この度は、｣

｢あー！いいって、いいって！そういう堅苦しいん、苦手やし！｣

｢……はい。｣

紫耀は、思っていた人物像とは大分異なっていた。

まず、父の好む人材だから、頭の固い大人の男だと思っていたし、眼鏡をかけて黒髪で……といった予想の正反対であった。

｢Aちゃん、社長……お父さんから、聞いてるんよな？｣

｢はい。紫耀さん、大学卒業を待って下さると伺いました。ありがとうございます。｣

｢あー、そんなん全然問題ないしな！むしろ、学生時代っていうのは宝物やから。大事に、楽しく過ごしてな。国際経済について勉強してるんやろ？将来、助けてもらうかも知らんしなぁ～。｣

紫耀の微笑みは、私の凍りついた心を溶かしてくれる気がした。

私には友達なんて殆ど居ないし、楽しく過ごせるかどうかは別としても、体裁ではなく私個人の生活を重んじてくれているように感じて、初めての感覚に戸惑ってしまったけれど、それでも笑顔で私の拙い話も聞いてくれた。

紫耀になら、何でも話せるような気がした。

｢Aちゃん。俺、まだAちゃんのこと、殆ど知らん。Aちゃんも、俺のこと、なーんも知らん。いきなりやったんやろ？ゆっくりでいいから、これからお互いを知っていこう。そんで、仲良し夫婦になろう。な？｣

この人なら、私に愛を注いでくれる。

そう思った。

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