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『もしもし？ 』
｢もしもし、優太くん？｣
『Aさん？本当に？』
｢どうして疑うのよ。｣
『いやだって、普段旦那が帰ってる時は電話なんか出来ないじゃん。』
｢……今、夫と外出中なの。彼が煙草吸いに行ってるから、｣
『ふーん……。Aさんも、悪い女だよね。旦那とデート中に、不倫相手と電話なんて。』
｢……優太くん、｣
『何かあったの？』
｢そういう訳じゃないんだけど……。いや、そうなのかもしれない。とにかく、優太くんの声が聞きたくなったの。｣
『あはは、何それ。Aさん的には俺はセラピーかなんかなの？』
笑いながら、なんて事ない会話をするのが心地好い。
紫耀と居る時には感じられないこの安らぎに、気が緩んでしまって、だから、気付かなかった。
｢お待たせ！……何、電話？｣
｢紫耀っ、えっとその、友達から電話掛かってきて、｣
あまりの驚きに、何も言わず電話を切ってしまった。
｢ああ、そうだったんだ。それなら、そんなに慌てて切らなくても良かったのに。友達、びっくりしちゃったんじゃない？｣
｢紫耀が、帰って来たの、全然気付かなくて……。びっくりして切っちゃったの。謝りのメール、してもいい？｣
｢勿論。｣
優太くんに、紫耀の声も聞こえていたとは思うけれど、念の為説明のメールをする。
直ぐに、気にしないで、と返信があり、心の底からほっとした。
｢……友達、なんだって？｣
｢あ、気にしないでって。｣
｢そう。よかった。｣
サングラスを掛けた紫耀の表情はよく分からなかったけれど、思ったよりも気にしてなさそうで、ほっと安心した。
｢もう直ぐ着くよ。｣
多分、サングラスなんて掛けていなくても、その顔が全て見えていたとしても、私には紫耀の気持ちなんて、きっと分からないのだろうけれど。
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作者名：渚 | 作成日時：2019年11月7日 3時
