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「みんながま……まさや、て呼ぶ時は、なんかかわいがってる感あるねん！でも、私は佐野くんのことずっと、入所した時から、なんでも出来るすごい人って思ってるから、佐野くんキラキラ〜て感じなん」
同期やから。こんな憧れみたいな気持ち持ってるの恥ずかしいやんなって思って、今まで言わんかったのに。
佐野くんがどんな顔して聞いてるかなんて気にする余裕もなくて、ひとりごとみたいに吐き出した。
「あ、それは…えーと」
そおっと顔を上げたら、佐野くんは私から目を逸らして慌ててパソコンの方を向いた。
こういう反応も、メンバーのみんなやファンの方達は"かわいい"って表現するんやと思う。
それで"晶哉"って、わんちゃんを呼ぶみたいに呼べるんだ。
「俺は、喜んでええの？」
「え？」
「苗字で呼ばれるの、その理由って褒められてる？」
「うん。特別」
少し不安そうだった横顔がふにゃっと緩みそうになって、寸前で正される。
ほら。佐野くんやって、年上の意地なんか知らんけど私にはふにゃふにゃな所見せんようにするやん。
だから、同じグループになった今でも、私と向き合う佐野くんはずっとかっこいい佐野くんで、晶哉なんて呼べないのだ。
「佐野くん」
「…わかった。苗字で、いい」
「はぁ〜助かった」
「でも」
「ん？」
「もっかいだけ、ちゃんと名前で呼んでみて」
言いながら、佐野くんの手が私の膝の上に置かれた。
せめて顔を伏せたかったのに。私の行動なんかお見通しだと言われているみたいで、悔しい。私は観念して佐野くんを見つめた。
「………まさやくん」
「……かっ……」
「へ？」
ぼふんって効果音が聞こえてきそうなリアクション。
真っ赤になった顔でこっちを見る佐野くんは、なんか、これは、だいぶかわいいかも、しれない。
「あかん。俺が無理やった」
「佐野くん？」
「………」
「…まさやくん？」
「あ〜〜〜〜」
言っとくけど、その後の話なんかない。
ただ、顔を押さえてパソコンのキーボードに突っ伏した佐野くんの頭が打ち込んだぐちゃぐちゃの文字の羅列は121文字でしたって。
話せるのはそれぐらいやから。ほんまに。
これ以上は聞かんといて！
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作者名：三十谷みそ | 作成日時：2024年3月4日 23時
