この期に及んで何を言う(佐野) ページ7
1/3
これは一体どういうことでしょう。
さっきまで同期4人で仲良く遊んでたやん。
ゲームしてさ、ご飯食べてさ、斗亜と太郎くんが帰ってさ、Aぇ! の二人でちょっと楽曲の話でもしようって言ってたのに。
「不公平や」
作業用のノートパソコンのキーボードを叩きながら不貞腐れている約180センチの背中を、ぽんぽん叩いて宥めている私は、何も悪くないと思う。
「どうしたん急に。私何かした？」
「ううん、何もしてへん」
せやんな。私何もしてへんやんな。
と開き直ってやろうかとも思ったけど、佐野くんが拗ねるなんて珍しいから我慢する。
うーん、なんやろう。
今日のできごとを思い返してみるも、私の家に同期メンバーが集まって遊ぶのはよくあることだし、なんにもおかしな所は無かったはず。
「佐野くん？」
「それ」
「へ？」
「なんで俺は佐野くんなん」
ふわふわした前髪の隙間からチラッとこちらをうかがう目と、視線がかち合った。
なんでも何も、佐野くんが佐野くんやから佐野くんなんやん。
と心の底から思っている私には、意味が分からない。黙って見つめ返したら、佐野くんははぁ〜と大袈裟なため息を吐きながら体ごとこっちを向いた。背中に触れていたせいもあって、距離が近い。
「斗亜は前からやけど、太郎のことは吉川くんって呼んでたやん」
「ん？名前の呼び方の話？」
「そう」
めちゃくちゃ今更ちゃう？と思ったけど、やっぱり佐野くんが拗ねるなんてものすごく珍しいから。
「太郎はいつから太郎になったん」
「太郎くんは、先週？先々週？やっけな。二人で遊んだときに」
「え、待って！二人で遊んだん？」
「うん。え？佐野くんとも二人で遊ぶやん」
別にそこは気にする所じゃないでしょうよ。
物理的に前のめりな反応をされて、三角座りをしている私の左膝のあたりに佐野くんの顔がズームインしてきた。びっくりしておでこを押したら、佐野くんは自分でもびっくりして顔を引っ込めていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 144人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三十谷みそ | 作成日時：2024年3月4日 23時
