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現れたのは、やたら顔の良い男だった。
「あー健ちゃーん」
「おーマイブラー」
そう言ってグータッチを交わす二人。
男の足元でカランコロンと音を立てる下駄さえなければ、とても絵になる。
「久しぶりのお隣さんやで」
「お、206号室かぁ」
「福本大晴です」
Aさんに目配せされて挨拶したら、イケメン男は自分の名前となぜかAさんの名前も名乗った。
「私はもう挨拶したよ〜。見て！お土産ももらった」
「あ、ちょっと待っててください。小島さん？の分も持ってきます」
部屋の中から手土産を取って戻ると、小島さんがAさんの肩にひじを乗せていて、Aさんはそれを気にする風でもなく、俺が渡した食べ物を取り出しては楽しそうに喋っている。
仲ええんやなぁ。
「小島さんもよかったらこれ」
「ありがたく受け取るとしよう」
「ちゃんとお礼言いや」
「ありがとうな」
「いえいえ」
「あ、そや。福本さん彼女おらんって！」
何が悲しくて初対面の男に寂しい身の上を知られなければならないのだ。
「いや。顔がええ奴は彼女おらんでも女おるかもしらんからな」
しかも女連れ込む疑惑持たれてるし。
顔がええと言われて一瞬ふわっと胸が躍ったけども、初対面の相手にそんなことを言われるのも腹が立つ。
目を細めて俺のことを見てくる小島さんは、Aさんに背中を撫でられ、たしなめられている。大型犬相手してるみたいやな。
しばらくその様子を眺めていたら、Aさんが「あ！」と何かを思い出したように声を上げた。
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作者名：三十谷みそ | 作成日時：2024年3月4日 23時
