キスキスバンバンⅢ (ページ7)

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なんでもないの日ページ7

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昨日、Aちゃんからスタジオに誘われた。
プライベートでのバンド練習は久しぶりだ。
しかも全員じゃなくて、パートの欠けた4人練というのがまた、いかにも練習っぽくて良い。
今日の朝、カバンの中にスティックを入れた時からワクワクしていた。
なんとなく浮ついた気持ちでスタジオ入りしたら、小島くんとAちゃんが大きな紙袋の中を覗き込んでいた。

「おはようございまーす！」

「「ひっ！」」

漫画みたいに、びっくぅ！と肩を上げた二人は、俺を見て、紙袋を掴んで、もっかい俺を見てから、ゆっくりと紙袋を掴んだ手を離した。

「俺なんでそんな諦めの表情で見られてるん？！」

「晶哉はなぁんも悪くない。」

「そうそう。俺らが勝手に、な。」

「な。やから忘れて。」

二人の連携プレーで無かったことにされようとしてるけど、いやいや無理よ？このままやったら練習中、一生気になるもん。

「一人だけ除けもんにせんといてよ～。」

拗ねた子どもみたいな言い方になってしまってちょっと恥ずかしかったけど、Aちゃんには刺さったみたいだ。

「除けもんはあかんな！うん！出そ！」

最近Aちゃんのチョロさに磨きがかかっている気がして、心配である。
小島くんは、いわく"最年少溺愛モード"に入ったAちゃんのことを白い目で見た後、どうせバレるからええけど、と紙袋にゴソゴソ両手をつっこんだ。
Aちゃんが紙袋の方を持って、二人がかりで取り出されたものは…

「象？！」

やたらデカい木彫りの象やった。
小島くんがそいつを床に下ろすと、スタジオのフローリングがごんっと鳴った。

「どう？」

どうって、そんなキラキラした目で見つめられても……。
改めて象を見るも、海外のおみやげ屋さんで売ってそうな独特の顔つきをしている。

「魔除け？」

「似たようなもんやな。」

「うん、成功を導いてくれるんやって！」

Aちゃんは象の背中をぽんぽん叩きながら、かわいかろ～と言ってニコニコしている。
俺からしたらその笑顔の方が何倍も可愛い。

「こちら、私とこじからちょっと遅めのクリスマスプレゼントでーす！」

「メリークリスマース！」

「そうやったん？！クリスマスとは別の異国情緒感じるんやけど！」

「ヨシ子には象が似合うと思って！」

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