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「そっから付き合うとかは、ならんかったん？」
「え？」
「Aもこじけんのこと、キスしていい相手やと思てるってことやろ？」
「…………」
「ちょ？！その反応はどういう意味なん？！」
こじけんからの返事がなくなった。
無理やりとか言うたら、話変わってくるで。
こじけんがモゾモゾ上半身を動かしているのが気配で分かる。
「あいつ起きへんかったねん。」
「おぉ？てことは……寝込みを襲った？」
「そー………なるんか！待って、うわ、最悪やん、俺。」
赤信号で隣を見たら、眉間にシワを寄せた顔がこっちを向いていた。
そんな絶望した顔されてもやで。
しゃあないなあ。
「でもAのこと好きなんやろ？」
「グループ内恋愛禁止や。」
「友達として聞くわ。」
こじけんは金魚みたいに口をパクパクさせて、あーとかえーとか散々悩んでから、「好き、なんやろなぁ」とだけ言った。
「ほんなら、間違ってはないやん。」
好き、て言い切るのも恥ずかしいくらい、本気で好きなんやろ？
「酒入ったからって誰でもいいわけちゃうやん。好きやからキスしたいっていうのは自然な感情やろ。」
信号が青に変わった。
「そ、れはそうかぁ。そうやなぁ。」
「な？」
「……ありがとう。」
「ええよ。」
「ほんまええ奴やな。自分もAのこと好きやのに。」
「は？」
予想外の言葉に耳を疑った。
俺が？Aを？好きって、なんでこじけんの口から出てくんねん。
「好きやん。」
「いやいや、え？決まってるん？」
「とぼけんでもええわ。めっちゃ分かりやすいやん。」
ついさっきまで、しおらしかったくせに、急に腹立つくらい生き生きしだすやん。
好きだ、と自覚する場面は何度もあった。
けど、こじけんも好きなら言わへんつもりやったし、なんなら、友達の好きやって思い直すつもりやった。
それなのに、こんな風に突きつけられたら、ここからどう転べばいいのか。
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作者名：三十谷みそ | 作成日時：2021年12月21日 21時
