キスキスバンバンⅢ (ページ24)

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「ちょっと、前髪分けるで。」

「はーい。」

切りそろえられた前髪に触れる。
ふと下を見ると、Aはメイクされる時みたいに、自然に目を閉じていた。
写真と同じように真ん中で分けようとして、おでこに指が当たる。
Aの唇がふにゃと動いたのを、見ないようにした。
俺の動きが止まったことで、Aがゆっくりと目を開く。

「どうかなぁ？」

……そんな背中押してください～～って顔されたら、押すしかないやんか。
ショートにしたいんやろ。
なんで決めてるくせに、聞きにくるねん。

そういう所やで。

心の中の文句と裏腹に、出た言葉は

「可愛い。」

Aが固まった。

「え？！なん？！」

スイッチが入ったおもちゃみたいに、Aの手がパタパタ忙しく動く。
引っ掴んでいた髪はシュル、と落ちて広がった。

「…っ、ほんっま！そういう所やで。」

「っはは、褒めたのに文句言うなや。」

「…ありがとう。」

思わぬブーメランと珍しく照れたAがおかしくて、俺から外れていく目線をじっと見ていた。
やっとここまで伸びたのにな。
こげ茶の髪をすくってサラサラと遊ばせていたら、いつもの調子を取り戻したAがこっちを向いた。

「短くなる前に、いっぱいヘアアレンジしてもらお。」

「…絶対めんどいやつさせるやん。」

「しばらく出来へんくなるから！思い出に！な！」

「な！ちゃうわ！」

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