・ ページ38
2/3
「私の恋愛事情に詳しい大晴の分析ではどうなんですか？男性目線で教えてください」
「男性目線て、俺とAの元カレて全然タイプちゃうやん」
「たしかに」
大晴は、私が仲良くなった男子の中で唯一、私の汚れた恋愛史に名を連ねなかった。
だからこそ、信頼しているんだけど。
「私が思ってるのはな」
「うん」
「私の魅力が従順さしかないから」
口にしたら途端に、身体の中がすっからかんになった気がした。さむ。
大晴が何か言おうとするのを無視して、窓を閉めようと立ち上がった。
カーテンをめくってすぐに後悔した。
一階教室の裏側は学生用の駐車場だ。
それは元カレがいつも車を停めていた所で。
「どうした？」
目が合ってしまった。
すぐにそらせば良かったのに、体が固まって言うことを聞かない。
カーテンの中に大晴が入ってくる。
「あれ、元カレ？」
「あ、、」
声が上手く出せなくて、仕方なくうなずいた。
最低な奴だと分かった。
これは本当の好きじゃないと知った。
それなのに、凝視し続けた目の奥はジリジリと痛む。
「こっち」
ふいに腕を引っ張られて、バランスを崩した私の体は、いとも簡単に大晴の胸元になだれ込む。
「ごめ、ん！」
顔を上げると三白眼の大きな目がすぐ目の前にあった。
あまりの近さに身をよじったら、大晴の唇が鼻先をかすめて、ミルクティーの甘ったるい香りがした。
「のけんといて」
大晴の息が私の唇を湿らせた気がして心拍数が上がる。
背中に回った腕が、頭を撫ぜる手のひらが、壊れ物を扱うみたいにゆっくり動く。
それが大晴のだなんて。
そんなの、だめだ。
「あいつ、おもろい顔してるで」
大晴が楽しそうに言ったけど、私には窓の外を気にする余裕なんか無かった。
密着した体からいろんなものが伝わってしまいそうで、なんとか動かせた指先で大晴のパーカの裾を引っ張った。
「何？」
「ちょっと、距離」
「嫌？」
「嫌、というか」
大晴が顔を離した。
私たちの間には少しだけ隙間ができて、その分見やすくなった互いの表情を、真正面から読み取るのが怖かった。
「なんで今目つむるん」
「なんか」
「逆効果やで」
「え？」
「キスしてくださいって言うてるようなもんやん」
シャッとカーテンの引かれた音がして、まぶたの向こうの光が薄くなる。
甘い。
乾燥した唇が触れた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 448人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです！ (3月10日 1時) (
レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます！うわ〜嬉しい！ぜひ長編をお待ちくださいませ！ (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します！神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります！よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます！読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった！ (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三十谷みそ | 作成日時：2022年4月6日 23時
